彼女の言動には時々面食らうことがあるけれど、今回のは格別だった。
「あぁん、いちぃ……」
ニノは僕を締めつけて、吐き出す精を気持ちよさそうに受け止めた。
何も隔てるもののない彼女の中はやわらかいのに熱くて、狭くて、キツい。壁の襞々がうねって、僕を絞り上げるように動くから果てたばかりなのに、すぐに元気になる。
「ニノ……」
「イチ」
中で膨らんで栓みたいに固くなった僕を、ニノが気づかないワケがない。
こんなにすぐに、続けざまにしたことはなかったけれど彼女の少し驚いた、でも先を期待するような色っぽい眼差しに遠慮なんてする気にはならなかった。
ただ。
〜 jump.3 〜
「本当に、いいの?」
一度、中で出しておいて訊くのもどうかと思うけれど、先刻〔さっき〕の彼女の言葉が本気かなんて僕にはまだ信じられなかった。
一度出しただけなら、もしかすると出来ていない可能性もある。
でも、続けざまに二回三回と出せば可能性はどんどん下がっていくだろう。
本当に、子どもが出来て困るのは女性であるニノの方だ。
堕ろす、なんて僕は彼女にさせたくないし。そんなことになれば、優しい彼女はきっとずっと自分を責め続けるだろう。
僕の躊躇はニノを困惑させた。
「なんで、そんなこと訊くの?」
彼女からすれば、一度言ったことを撤回するつもりはないようだ。まあ、昔から負けず嫌いではあったよね?
くっついた腰を魅惑的に刺激して、「早く」と僕を急かす。
「僕との 子ども が欲しい、なんて知らないよ?」
「……ど、ういう意味? んぁ!」
奥を突くと、ニノは跳ねて気持ちよさそうなやらしい声を何度か上げた。
「僕と、結婚する? そんな覚悟がニノに、あるの?」
厳しく責めながら訊けば、体がそれどころではない彼女はうっとりと細めた目だけで僕を捉える。
幸せそうに、笑った。
もちろん、それは――僕の 願望 かもしれなかった。
でも。
ギュッと首に腕を廻してきた彼女は、僕の耳元に唇を寄せて「する、よぉ! ……だから、して?」って……おねだりみたいな、それとも僕への返事のつもりなのか、あるいは両方? とも取れるボンヤリとした言葉の羅列を弾むように口にした。
「とりあえず、準備しないとな」
と、僕はニノと続けざまに二回したあと、呟いた。
無責任なことはしたくない。何の対策もしないままニノの中に子種を吐いたのは彼女が望んだからではあるけれど、そのように導いたのは僕だ。
断られるのが嫌だから今までニノに その類の話 をしたことはなかったけれど……子どもを望む関係であるのなら、あって然るべきだろう。
僕はずっと考えてた。
ニノだって、きっと断らない。
夢のような展開だ、と段々と本気になる。
「……じゅんび?」
くたり、とうつ伏せに倒れた彼女は事後の動きの鈍い思考回路を懸命に動かして、僕に問うた。
「なんの……はなし?」
首を動かすのも、今の彼女には億劫なのだろう。深く息を吐くとトロンとした目を上げる。
瞼が重そうだな、と僕はそのあどけない様子に微笑む。
よく考えれば、なんの話か? なんて、すぐに気づきそうなものだけど……分からないの?
汗ばむ頬にしっとりとはりついた髪を梳いて、耳の裏側に流す。心地よさそうにニノはされるがままになっている。
「ヒミツ」
今は、まだね。
ちょっと彼女が不服そうにしたけれど、睡魔に襲われたニノは深く追及することなく寝息を立てはじめ、行為に及んだそのままの格好で僕を悩ませた。
子どもを望むなら、何もしないのも手だ。
しかし、どうせならちゃんとニノにプロポーズをしてからつくりたかった。僕はできる限りの後始末を施して、彼女を腕の中に囲いベッドに横になった。
>>>つづきます。
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