息が白い。 暖房が切れているのか、リビングはひんやりと凍えるように冷え切っている。なのに、全裸で抱き合う二人の身体は触れるところすべてが溶けるように熱い。 「あ、ああっん!」 何度目か、彼の舌と指で飛び跳ねた彼女はソファに沈んで、白い息を吐き出した。 「ま、まだ?」 いい加減、ひとりでいくのには焦れを感じはじめた朱美が責めるように菫を誘ってくる。 菫もそろそろ、限界だった。 何度も暴走しそうになるのを制していたこともあり、冷や汗さえ浮かぶ。 「ん、いくから。ちょっと待って」 「ダメ」 むくり、と起きた朱美は妖艶に微笑んで、逆に菫をソファの背もたれに押しやった。 「朱美? 準備しないとできないって……おい」 「菫さん、つけないで。わたし……」 四つん這いになった朱美は、しなやかな一糸纏わぬ裸体を猫のようにくゆらせて菫へと迫る。 こぶりな胸のふたつの膨らみ、くびれた腰つきは華奢で、濡れた下肢の付け根はやらしく光を反射し茂みの奥の聖なる楽園を安易に振りまいている。 (ほかの男には、絶対見せられない絶景じゃないか) と、状況とはまったく関係のないことを、なぜか考えて菫はぼんやりと彼女のその姿を目に焼きつける。
朱美は彼をまたいで、間近でとらえると触れるだけのたどたどしいキスをした。
「 あなたが欲しいの 」 不器用なキスと、対照的なおよそ彼女らしくない眼差しに菫は一瞬記憶が跳んだ。 深いふかいキスをして、沈みこんでくる朱美の中に埋めこむ。久方ぶりの素の感覚に、脳内の思考回路はほぼ全滅だった。 「あ、うそ」 朱美の方も、その感覚は一緒だったらしくビックリしたように跳ねて、引き戻されて、翻弄された。 「菫さん、待って……あ、ああっやん、いく!」 びく、と背中を反り返らせて下からの容赦のない突き上げに、朱美の身体はつっぱった。 彼女の中もものすごい力で収縮し、すべてをもっていこうとうねる。 「あけみ、……朱美っ!」 呼び覚ますように名を呼んで、再び朱美を組み敷いた彼は彼女の片脚を持ち上げて楽園への入り口をさらに押し広げる。 すでに奥深くおさまった自身を、彼女の壁へと押しつけては入り口近くまで抜く。その激しい繰り返しに、快感が駆け抜けて身体がきしむ。 「あ、ああん、いいの! や、待っていく! またいっちゃう! 菫さん、あっ……!」 支離滅裂な言葉とともに彼にしがみついた朱美に、菫もまた激しく打ちつけた。 「待たない、もう待てないんだ……俺、もう……っ!」 一度、いっても足りなかった。 何度も何度も攻めたてて、そのたびに彼女の中に吐き出していく想いの糧。 藤色がかった薄い色素の自分の眼差しが、彼女の朦朧とした瞳の中で別人のように獰猛な輝きを放っている。 こんな俺でも、君は―――。 「 好き 」 菫の胸に顔を埋めながら、朱美がうっとりと告白する。 「大好きよ、菫さん」 「俺も……愛してる」 最後はいつも、いきつく場所にいきついて朱美に抱かれている。 還る場所はいつだって決まっているんだ。 潔く無邪気で、可愛いのに時々とても面白くって、包むように優しくて、どこまでもいとしい……この場所。
くりすます・エデン。3 <・・・ 4 ・・・> くりすます・エデン。5
|