「菫さんのスケベ!」 「まあね」 「ヒキョウモノ!」 「落ち着けって」 「女好きーっ!」 「……だから、なんでそうなるかなあ?」
ジタジタと抵抗する朱美は、その意に反してどんどんと服が脱がされていく。 彼女からすれば、(なんで?)ってくらい簡単にそういう状況に追い込まれている。 毛糸のセーターにロングスカートは、すでに彼女の身から離れてソファの下の床に落ちているし。中に着ていたブラウスもボタンが外されて、前ははだけていた。 授乳期のため普段よりも大きなDカップサイズの淡い藤色のブラジャーは、上にたくし上げられたまま外されるのも時間の問題で放置されている。 「香水の件なら、コレの後でちゃーんと話すから」 「だから、なんで「 後 」なのよっ?!」 怪しいとばかりに、声を張り上げて朱美は抗〔あらが〕い、にこにこと笑う夫の胸を押した。 その腕を捕られて、逆に動きを制される。 「イロイロあるんだ……イロイロ、ね」 (だから、それが怪しいんだってばっ!) 「――分かった」 抵抗をピタリ、と止めると、朱美は大人しくなりジットリと上になる菫を見た。 「でも、絶対! 感じてなんかやらないからっ」 ふ、と沈黙が流れると、菫の藤色がかった瞳がヒラリと閃いた。 「望むトコロ」 明るい部屋の中で、静かに妖しく微笑んだ。
*** ***
「……はぁっ、ん………ッ!」
自分の口から洩れたエッチに掠〔かす〕れた喘〔あえ〕ぎに、朱美はカッと頬を染めた。 リビングのソファにもたれた菫に対峙して、彼の上に跨〔また〕がった朱美の肌はそれでなくても、色っぽい赤みをおびる。うっすらと汗ばんだ肌が、カーテン越しの夕暮れにさらに赤く染まった。 ホックを外されたブラジャーの紐が、彼女の肩から腕に滑り落ちていた。しかし、ブラウスは着たまま……菫も上ははだけただけで下も全部は脱いでいない。 二人、繋がっている場所だけが薄い一枚の膜を隔〔へだ〕てて完全に 裸 だった。 中心の奥深く突き上げる刺激に、思わず朱美は口を押さえた。出てしまう……発してしまいそうな衝動に耐える。 「あ、けみ? 感じてる?」 「感、じてないっ、てば! ……ッん!」 からかうような菫の上目遣いに、朱美は首を振って夢中で否定する。悩ましげなその姿が、菫をさらに興奮させているとは知らないのかもしれない。 強く、ときにゆるやかに動いて菫は、朱美の身体を走る快感を感じとる。 「素直じゃないなあ……」 と、ため息のような囁〔ささや〕きに朱美が、ムッと唇をすぼめて言った。 「 心外 だわ」 その身体のうちで、びくびくと痙攣〔けいれん〕を起こしながら平静を装うと、鮮やかに笑った。 「わたしは、素直よ。すっごく」 あ、と朱美は狂おしい波に襲われる。 菫の手によって揉みしだかれ、摘まれる胸……ひとつは、彼の目の前でぷるんと揺れて吸われる瞬間を待つように固く実っている。 菫は口に付けると、舌で転がした。 「………ぁッ…んん!」 「声、出していいんだよ?」 歯を優しく立てる。 「…ッ! イ……・ヤ!」 言って、ビクンと大きく仰け反り力が一気に抜けた。 菫にもたれかかって、ハァハァと荒い息を吐く。 「イった?」 そろそろ、締め付けに耐え切れなくなっていた菫は、それでも余裕でイったばかりの朱美を覗き込む。 顔を背けて、朱美は息を乱したまま「 嘘 」をついた。 「イってないっ、てばっ」 「そ。じゃ、もうちょっと付き合ってよ」 「………やッ!!」 思わず、腰を浮かしそうになった朱美を留めて、彼は彼女の中を突き抜けた。 声、ならぬ声が上がる。 と、同時に朱美の中の奥深い小路で菫自身がすりついて、すべてが解き放たれた。
ホワイト・デーの午後。4 <・・・ 5 ・・・> ホワイト・デーの午後。6
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