ワイト・デーの後。3


〜Sumire and Akemi〜
 エッチ度=★☆☆☆☆
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 左手首を菫に捕られた朱美は、ビクリと顔を上げる。
 そこには、いつもと変わらない色素の薄い瞳が微笑んだまま、彼女の間近にあった。
「ひとつ、確認しとくけど蒼馬は今日、帰り7時だったっけ?」
「……そう、だけど」
 まっすぐに直視することが、どうしてもできず――朱美は、菫の手に掴まれた自分の手首を見た。
 さりげなく、彼の手から逃れようと画策する。が、彼の腕は筋肉質ではないのに、意外と力が強い。
 逃げようとすれば、さらに強く捕らえられた。
「友達と集まって一緒に星の観察の宿題をするんですって……それで、日向ちゃんのお家の方が、夕ご飯をご馳走してくださるって話、なんだけど」
「そっか、十分だな」
 言うが早いか、菫はアッという瞬間に朱美の両手首を片手に捕らえて、後方へ押し倒す。

「…キャッ!!」
 ちょうど「バンザイ」の格好になったまま、朱美は体勢を整えることもできずにソファに横たえられた。
 毛糸のセーターが乱れて、端から彼女の白い素肌がのぞく。
「菫さん!」
 キッ、と睨んで朱美は抗議をする。
「何するのっ?!」
 動きを封じられた妻を、意外そうな顔をして菫は見た。
「――分からないの?」
 と。
 朱美は、息をのむ。
「………ッ!」
 これは、「そういう」時の彼ではなかった。雰囲気がまるで、違う。
 じゃあ、 コレ は……?
「な、なにするの?」
 ドギマギと自分を見る彼女が、たまらなく可愛い。
 にっこりと笑って、「勿論〔もちろん〕」と菫は宣告した。

「くすぐりの刑」


   *** ***


「いやっ!」
 身をよじると、朱美はたまらず声を上げた。じたじたと足を動かすが、上に乗った菫の身体はビクともしない。
「や、やめて! すみれさ――うひゃっ……ふ、くふふふふふふふ。やぁんっひゃっう、やーめーてーっ。くふっ、ふふふふふふふっ」
「だから、白状しなって」
「やぁっ!」
 涙目になりつつ、朱美は横腹を蠢〔うごめ〕く菫の手の絶妙な動きに耐える。
 午後のリビングで長い攻防が続き、朱美の息は乱れていた。
「……朱美」
「や――くふくふくふふっ。菫さんのばかぁ」
「だから、何で?」
 くふくふ、と笑いながら朱美は口をすぼめようとする。ムッ、と目だけで上の彼を見た。
「……だって」
「だって?」
 恨めしげに、菫を見ると「本当に分からないの?」と、不満げだった。
 菫が首を振ると、真っ赤になってぽつり、と言う。

「だって、菫さん…… 香水 変えたでしょ?」


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