風呂からあがってきた菫は、寝室の扉を開けると笑った。
「お待たせ」 彼の帰りを待っていた妻は、すっかりと洗い髪を乾かしベッドの上に座っている。 「服、また着たの?」 「だって……」 頬を染めた朱美はもごもごと口ごもると、ギュウギュウと自分の上着を下に引っぱる。その仕草は、黒のスパッツを隠すように見えなくもない。 「朱美が、 風呂先に入って っていうから、入ってきたのになー」 しかも、その言いようが入って来なかったら、「しない」だったのだから……「する」気持ちはあるハズのくせに、この格好。 「うっ! ……そう、なんだけど!」 「あそこまで、盛り上げといてコレはないんじゃない? 朱美サン」 ベッドに乗ると、朱美の頬のあたりで切りそろえた黒髪を手のひらで弄〔もてあそ〕ぶ。 「だって!」 言い訳をしようと顔を上げた朱美に、菫はもともとワケなど聞かなくても分かっているのでさせなかった。 「ん……す、みれさん」 「黙って」 「ん。んん、……んは、ふ、ぅ」 最初はチュッと軽く、次に深く。 朱美の口に侵入した菫の舌は、彼女の舌に絡まり、挑発的に引く。 その挑発に、彼女の舌が反応するとさらに激しく絡みあった。 「ん……は、ぁ」 二人の唇が離れた時、二人の身体が絡まってベッドに横たわる。 チュッ、と唇が触れるだけのキスをすると、菫は息をわずかに乱した朱美を見つめた。 朱美の黒い瞳が、見上げる。 彼女の寝巻きの裾から、彼女の素肌に触れる。 そのまま、その寝巻きをズボッと上に持ち上げ、頭から脱がした。 そして。 ぱさり、とベッド脇に追いやる。 蛍光灯のはっきりとした視界の中、露〔あらわ〕になったのは白い肌と普段よりも大き目の豊満な二つの膨らみ……。 頂きの蕾は、まだ咲き誇っては、いない。 菫が風呂に入っている間に、先ほどの熱は落ち着いたのか? あるいは――。 燻〔くすぶ〕っているのか? 風呂の湯に適度に湿った菫の手が、その膨らみの片方に触れて、指で頂きを弾く。 「――ッあ……」 菫は自分の寝巻きであるシャツのボタン……もともと、上二つほどしか止めていなかったのを、素早く外す。 朱美の手が、その裸の背中に回ると、裸の胸と胸を重ねた。 唇から耳、うなじに下りて鎖骨に深い痕を残す。 朱美の右の胸と、スパッツをはいた左の腿の内側を菫の手が器用にまさぐった。 「はぁん……あ、ああっん」 踊るように身体をひねって、朱美は甘くはしたない声を上げた。 その声が、一際大きく上がったのは菫が彼女の頂きに上り着いた時――。 そこは、咲き誇っていた。 口に含むと、菫は少し舌でころがす。 「ひぁっ」 びくん、と身体が反応するのを朱美はいけないことのように抑えようとする。 カリ、と菫は歯を立てる。 「ぃ、アんッ」 「そうそう、我慢はダメだよ。朱美」 「そ、そんなこと、いわ……ふぅん……、ても……んぁ、ソコ、だめぇぇ」 「ダメ?」 どこが? とばかりに腿の内側から奥に手を伸ばす。 「まだ、胸がイイとか?」 「ぁあん、すご……やぁん」 首を左右にふりふり、身悶える。 左右の胸を手と口で、しかも下半身にまで官能が走れば、思考回路がショートしそうになってもおかしくない。朱美は、まさに今、その状態に陥っていた。 菫は口に頂きを含んで、出てくる母乳を吸う。 朱美の身体は、素直に反応しびくびくと震えた。 下半身を撫でていた菫の手が、じかに朱美に触れるとソコはすでに彼を待っていた。 彼女の膝のあたりで止まっていた黒のスパッツと、下着を取りのぞくと、自分もズボンと下着を脱ぐ。 「さて、と」 菫も呼吸を乱していた。 ベッド脇のチェストに手を伸ばす。
竜崎家のバレンタイン。2 <・・・ 3 ・・・> 竜崎家のバレンタイン。4
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