崎家のレンタイン。2


〜Sumire and Akemi〜
 エッチ度=★★☆☆☆
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「イ・ヤッ!」

 菫の胸から逃れようと試みる朱美は、即答で拒否した。菫の危惧もむなしく、彼女はすっかり拗ねてしまっていた。修復はまず、正攻法では無理だろう。
「――ッ」
 びくり、と朱美の身体が緊張する。夫の胸から顔を上げた状態で、キッと彼を睨む。
 涼しい顔をした夫は、妻の風呂あがりの寝巻き……だぼだぼとした厚手の服の裾から、裸の背中に手を滑りこませて微笑んだ。
「きゃっん!」
 冷たい指が背筋をスッと走り、ゆっくりと戻る。ゾクリ、として朱美は思わず声を出した。

「イヤッ!」
 ドン、と菫の胸を叩くと腕から逃れようと、ジタバタと手足を動かした。
「やだってば! 菫さん、サッサとお風呂に入って来たら? わたし、寝とくからっ」
「駄目だよ、……風呂には入るけど、寝かさない」
「 ! 」
「ちゃんと、 驚く からさ……」
 ドンドンと胸を叩く彼女の腕を片方掴み、片方は服の中から彼女の背中を撫でる。
「んっ! ……っん、んー!!」
 顔を背ける朱美の唇に無断で唇を寄せると、必死に閉じようとする口を開けさせて舌を入れた。逃げようとする彼女の舌を、追いこみ絡〔から〕める。
「っん、んん」
 そのキスの前から激しい抵抗を続けていた朱美は、すぐに苦しそうに息を洩らす。ほとんど、酸欠状態になって頭の中は真っ白だった。
 ベッドへと押し倒された時には、もう身体が思うように動かなかった。

(……これは、酸欠なんだから、だから。
 仕方ないのよ――…)

 電気は煌々〔こうこう〕とついている。朱美を押さえつけた菫の顔もはっきりと、逆光の中、見える。
 その色素の薄い瞳に、口をへの字に曲げる自分が映っているのまで鮮明に……。
 彼はフッと背中に忍びこませていた腕を下げ、捕っていた朱美の手を解放する。
 と、代わりにその手を寝巻きの裾から彼女の胸に伸ばした。彼女の背中を徘徊していた腕は、自分の身体を支えるため脇につく。

 「ふふ」と笑った菫に、朱美がぼんやりとした声で訊いた。
「 なぁに? 」
「いや、豊満だなーと思ってさ。スレンダーな朱美もいいけど、こういうのもいいね」
 ぽかん、と菫を見ると、朱美は頬を染めて言う。まだ、少し不機嫌な顔で。
「蒼馬の時もしたじゃない。なに言ってるの?」
「ん。だから、新鮮だろ?」
 何しろ、その息子・蒼馬は現在小学3年生……つまりは、9年ぶりの体験なのだ。
「アッん!」
 ふにょ、と強く掴まれた刺激で朱美は声を上げた。ゾクゾクと何かが走る。
 去年次男・由貴を出産して大きくなった胸は、当初より幾分こぶりになってきたとは言え普段よりも1.2倍くらい大きめで菫の手におさまらない。
 その頂きが、今はチリチリと熱い。
「朱美、感じてる?」
 むっ、と唇をすぼめると、朱美は一呼吸息を止めた。

「感じてるわよ、悪いッ!?」

 にこり、と菫が妖艶に微笑んで「悪くない」と囁〔ささや〕いた。


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