彼女に舌を這わせると、軽くイッたようだった。
(――そろそろか) と、思い下を脱ぐと、彼は彼女の中に入れていた指を取り出した。 蜜に濡れているそれを、ぺろりとなめるてみせると陶酔したような彼女が、少し目を瞠ってそっぽを向いた。 「バカ……」 そのひどく女らしい横顔に胸がドキドキする。 「可愛いよ」 「な、なに言ってるのよ!」 怒ったような、照れた彼女は汗ばんで頬に髪を張りつかせたまま睨んでくる。 クラクラするような、誘惑だった。 「無意識なんだろうけど」 「え? ――っあ!」 くすり、と笑った彼に何故か安心しそうになり、彼女は膝を深く割られたことに動揺した。 「怖い?」 「………ん」 こくり、と息を呑むと彼の背中に手を廻す。 「すっごく、怖い」 と、言いながら彼女は彼を待った。 片方の太腿を抱え上げられ、ひくりと感じた熱は今、彼女の一番敏感になっている場所にあてがわれている。 かと思うと、中へと一気に侵入してきた。 「ひあッ!」 その痛みに思わず大きな声を上げて、彼にしがみついた。 「痛い、痛いよッ……すみれさんんぅ」 ググッと強い力で奥へと入ってくるそれを、彼女の内壁が締めだそうとする。 肩で息をして、「痛い、痛いの」と訴える彼女に、彼が眉を寄せて覗きこんだ。 自分を包んで離さない、温かなそこをさらに深く突きたいという衝動。 耐えるには、かなりの自制がいる。 止まった彼の侵入を、潤んだ彼女の目が不思議そうに眺めていた。 「止〔や〕める? だったら抜くけど」 「 ……… 」 ひどくつらそうな彼の顔に、彼女は知らない間に答えを出していた。 ほとんど本能と言ってもいい。 チュッ、と彼に顔を寄せるとキスをする。ごく浅い、子ども同士がするようなあどけないキス。 「朱美?」 見つめ合うと、彼女の目はすぐに苦痛に歪んだ。 「あ、あ、ああっ………イ、あんっ」 自制を外した彼の動きは性急で、少しも待ってはくれなかった。 彼の背中にしがみついたまま、彼女の痛みに閉じたられた目じりには涙があふれて、流れた。 「ああ、ああんっ。ダメ! もう、わたし……ワケ、分かんなくなるッ」 守られ続けていた内壁をこれでもかと異物で摩擦され、彼女の身体は悲鳴をあげていた。感じきっている場所は、痛みとは関係なく……いや、むしろ痛みから快感を得るように蜜を生む。 くちゅん。 不思議な音色だと思う。 やらしい……なのに、どこか厳粛で神聖な音楽のようだ。 (変、変なの……なんか……) 彼女は、気づいていない。 自分の腰がカクカクと動き、彼の理性を絡めとるまでに執拗に求め合っていたことを。 「はぅん、はん、はああんっ」 うっすらと開けた視界には、色素の薄い彼がいる。 動いて、互いの汗をすべらかにしっとりと分け合った。 「すみれさん、菫さん!」 「わかってる、分かってるから」 彼女の首筋にキスをいくつも落として、さらに胸の頂きと彼女の尾てい骨〔びていこつ〕のあたりを弄んだ。自らを制御することも限界にきているというのに、彼女という身体を探索するのは楽しくてやめられない。 刺激に反応した素直な彼女の身体は一際大きく彼を求めて、伸縮する。 「ひぁ、アアんッ!」 「うぁ……ッ!」 どくん、と互いの身体が深く繋がり、彼女の締めつけに彼自身が答えた。 あらい息を吐き出しながら、二人は一瞬の永遠を遠い意識の中で感じた。
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