様、おをどうぞ。5


〜Sumire and Akemi〜
 エッチ度=★☆☆☆☆
 神様、お手をどうぞ。4 <・・・ 5 ・・・> 神様、お手をどうぞ。6



 しばしの撮影会のあと、菫は朱美を背後から抱きしめた格好のまま、訊いた。
「まだ、連絡来ないの?」
「うん……この天気だし。もしかしたら、飛行機が遅れてるのかもってお母さんが言ってた。でも、お父さんの場合、手紙自体が届くまでに時間がかかるし――タイミングが悪かったら、まだ読んでないってこともあるんだけど」
 実際、撮影旅行に出ると半年宿に戻らないとかはザラで、これまでもことごとく朱美の父は彼女の記念日を不在にしていた。
 もはやギャンブラーな領域になりつつある賭けなのだが、それでも朱美は諦めきれなくて待ってしまう。
「 大丈夫 」
 と、菫が自信満々に言い切った。

「来るよ、きっとね」

「――さて、菫。それはどうでしょうね?」
 しずしずとやってきた、白髪だったり丸禿げだったりする竜崎家三役、和装の爺〔ジジイ〕トリオは、意気消沈の新婦に向かってにっこりと笑って、お決まりの攻勢を続けた。
「どうしました、朱美さん」
「新婦ともあろう方が 元気 がないようでは、先が思いやられます」
「それでは、 私どもを 欺〔あざむ〕いて作った子どもにもよくないでしょう」
 端々から出る粘着質のイヤミ。
「私どもからの、結婚祝いは気に入っていただけましたか?」
「お気づきでしょう?」
「何しろ、こんな季節外れの 台風 なんて、そうはない」
 くくく、と笑う三人に菫はぼんやりと思った。
(――やっぱりね)
 そうではないか……と、最初から疑っていただけに単刀直入に明らかになって、逆にスッキリした。
「爺様方、悪趣味ですね」
 肩をすくめた菫が、胸に朱美を閉じこめたまま笑って……笑った顔のまま三役の老人をまっすぐに眺めた。

「大人気ない」

 すっぱりと言い切られて、三役ジジイどもは静かに反論をまくし立てる。
「失敬な」
「正当な慰謝料です」
「菫、貴方もすこしは労わりなさい」

「イヤです」
 キッパリと反抗して、菫はとろりととけるように甘く微笑んでみせた。
 目をわずかに開いて、三役は深いため息を吐いた。彼女を紹介された当初こそ、菫の朱美に対する頑なさに危うく昇天しそうなほど 辟易 としたものだったが、最近はもう慣れてしまった。
 習慣とは、恐ろしいと冷ややかに思う。
「言うと思いましたよ。菫」
「貴方ともあろう者が こんな 女性に誑〔たぶら〕かされて、情けないじゃないですか」
「勿論、私どもも 見識 が甘かったことを反省してはいますが」
 ジジイ三人は口に笑みを含みながら、目はまったく笑わずに、菫の胸で逃げられなくなっている朱美へと目線をすべらせて顔を見合わせる。
「本当に、失敗でした」
「菫がこんな 悪食 だと知っていればねえ?」
「徹底的に 私どもが 予防 いたしましたのに」
 そして、彼らは最後、見事に声をハモらせた。

「 どう、思われます? 朱美サン 」


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