ふにゃ、と。
衣装の上からまさぐられる朱美の胸の先はすでにピンと固く主張をはじめていて、菫の手のひらにも強く存在をアピールしていた。
息を乱した朱美は、菫の頭を抱えて暴走していく身体に耐えようと抱きしめる。
「ん。……やぁ! だ、ダメだってば……ひぁ!」
固くたちあがったそれを強くつぶされると、一際高い声をあげてしまう。
「だ、〜〜〜〜〜やぁんんっ」
自然と広がる脚の間に、手を入れられて言葉にできなくなる。
低温の彼の指先が内腿をつたってのぼる。
「ん、んんん!」
背筋がゾクンゾクンと反って、脳天からつま先まで神経がとぎすんだ。
息を呑んで、ぐっと朱美は潤んだ目を閉じる。
と、手が止まって菫はため息を洩らした。
「あー、失敗した」
朱美の身体を抱きしめて、彼女の肩に額を埋めると悔しそうに呟く。
「これでできないなんて、拷問じゃないか? 朱美」
「………」
そんなこと、真剣に訊かれても困るんだけども――。
「 し、仕方ないじゃないさ 」
ようやくホッと息をついて、朱美は力を抜いた。
まさか、ここで本気でコトをいたすのかと最悪彼を引っぱたく覚悟をしていたが、さすがにそこまでケダモノではなかったらしい。
「こんなトコでしたら、恥ずかしいってば」
「神様の面前だから?」
からかうように上げられた眼差しに、朱美は赤くなり頬をふくらませる。
「それも、あるけど! 誰かに見られちゃったらどうするの?! っていうか、絶対見られちゃうし! ココで式、挙げれなくなっちゃうってば!!」
場所は解放された式場の壇上、平日とは言え誰でも入れるスペースなのだ。
「そっか。僕の場合、一番の理由は君のここの事情だけどね」
そう言って、菫は朱美のお腹に優しく手を置いて耳を寄せた。
「本当に失敗した。こんなに早くできるなんて思わなかったから」
(……アレでできなかったらある意味 大問題 だと思うけど)
本気なのか冗談なのか、しみじみと悔やむ菫に朱美は空恐ろしいものを感じながらつっこんだ。
思い返してみても、あの子作り期間はすさまじいものがあった。日に襲われないことは一度となくて、しかも一回で済むこともなかったものだから身体が壊れるかと思ったくらいだ。
快楽の間は、そんなことも頭から吹っ飛んでしまうほどよかったのだけれど……コトのあとは体力的に壊滅状態にあったのも事実だ。ハッキリ言って、二度とはお願いしたくない。
しかし、――めでたく子どもを授かり安定期に入った今、そういうコトが「できなくはない」とは言えあの頃の際限のない行為からすればストイックな生活になって、お互い知らずに欲求をためこんでいるらしい。
欲望に慣れた体は、ときどき暴走する。
最近、自覚して自粛していただけ余計に……。
「 菫さんのスケベ 」
チャペルの宣誓台でこういうことになった経緯〔いきさつ〕に今更ながら赤くなり、朱美は照れ隠しに悪態をついた。
と、菫も応戦した。
「朱美こそ、ノリノリだったくせに」
くすり、と笑って互いについばむようにして唇を寄せ合った。
*** ***
衣装室への道すがら。
「 くしゅん! 」
と、くしゃみをした朱美に菫が訊く。
「風邪? やっぱり肩は出さない方がいいかもな」
(僕の自制がきかないから)と、含みのある微笑みで花嫁を見下ろすと、彼女は至極真面目に頷いた。
「うん。でも、誰かの悪意を感じた気もするんだけど……」
朱美は肩にかけたストールを引っ張って、
「誰、かしら?」
顔をしかめた。
心当たりがありすぎる……というのも、問題かもしれない。
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