P-kan! 夏 ココナッツ。6


〜Sumire and Akemi〜
 エッチ度=★★☆☆☆
 P-kan! 常夏 ココナッツ。5 <・・・ 6(終) ・・・> あとがき



 好き、愛してる……どんなに口にしても、抱き合っても足りない。
 何度、吐き出しても気持ちは溢れてくるから。
 だから、昨日よりも今日よりも……明日が待ち遠しい。


「いっい湯だな、ハハン」
 菫の腕の中、上機嫌でひと昔前の流行歌を口ずさむ朱美は背中の彼にもたれかかって白い湯気ののぼっていく空を眺めていた。
 先ほどの情事のことなど、微塵も感じさせない無邪気な横顔。
 菫はそんな彼女をいつも不思議に眺めながら、(かわいい)と抱きしめる。
「もう一回、する?」
 朱美の濡れた黒髪が頬にあたり、唇を耳につける。
 そっ、と耳朶を甘噛みすると、彼女は「だぁめ」と菫をふり返る。
「どうして? 朱美のココ、まだ元気そうなのに」
 そう言って、ふたたび溝を指で広げる仕草をする彼に朱美は体を離してダメダメと首を何度も振った。
「明日も遊ぶんだから、力は温存しとかなくちゃ!」
「……俺と遊ぶより、やっぱり蒼馬と遊ぶほうが大事なんだね」
 はあ、とため息まじりに言われ、それが彼特有の冗談だと分かっているから……朱美は、違うってば! と笑って許した。
「そうじゃなくて! 菫さんと蒼馬と由貴と遊びたいの。せっかくの夏の思い出なんだからっ」
 「この 夏 は一度しかやって来ないのだ!」と熱く握り拳を作って宣言するや、朱美はザバリと立って露天風呂を出る。
「ふーん、俺はどっちでもいいけど……確かに、「夏の思い出」って感じだね」
「何が?」
 気のない夫の言葉に不満そうに眉を寄せ、ふり返る朱美は不可解そうに訊いた。
 その立ち姿に、答えはあるのに――。
 思わず、頬がゆるむ絶景。

「一日でも結構焼けるんだな……いい目安になったけど」

 菫の視線に目を落とすと、朱美は自分の姿に唖然となった。
 日に焼けていない白い場所に散らばった薔薇色の痕。際々を狙ったようについたモノもあったり、ふくらみの中流に咲いたモノもあったりと様々だ。
「ねえ! 菫さんっ、コレ、ちゃんと見えないトコロだけにつけてる?」
 少々、不安になって朱美は彼に駆け寄った。
 ヤキモチを焼いた菫が厄介なのは、こういうトコロだ。
 何気なく、大胆なコトをする。しかも、本人は それ を当然のことだと認識しているから言質だけを鵜呑みしたら大変なことになる。
「うん、一応」
「一応ってナニ? 一応って!!」
「だから――」
 スッ、と朱美の尾てい骨の下に指を滑らせて太腿までずらす。
「 さ、さわやかにナニ笑ってんのっ! 」
 ふと、妖艶に笑う彼に朱美の不安はさらに増長した。

「だから。ココ、にひとつ。大丈夫、ビキニのパンツで隠れるトコロにしたよ」

「ホントに?」
「うん」
 あまりに彼女が必死になるので、菫は安心させるためにゆっくりと頷いた。
 本当は、際どいモノがあるのだが――。
(まあ、パレオがあれば隠れるトコロだし……平気平気)
 膝をついてホッと息をつく朱美をふたたび湯船に誘って、菫は彼女の右の腿の付け根に残る 鮮やかな 所有の証に ふわり とほくそえんだ。



 青い海に白い砂浜。
 昨日と同じく、気持ちいいほどのピーカン晴れで竜崎家族は外に飛び出してきた。
「よぉし! 今日は由貴のために 砂のお城 を作ります」
「あいー」
 にっこりと手を挙げて嬉しさを表現する次男。
 げんなりとする長男。
「一晩で機嫌が直ってるし……しかも、テンションがさらに上がってるんだけど……父さん」
「そこが、朱美のいいところ」
 ぽそり、とごく自然に惚気〔のろけ〕る物静かな父親に、蒼馬ははあ、と諦めた。
「そうかもね……」

「――由貴のお城を作ったら、海の家で 焼きそば を買って。午後からは スイカ割り の予定です! いいですかー?」

 晴やかな空に上機嫌の朱美の声が響いて、その日はすべてが彼女の予定通りにすすんだ。
 ただ、ひとつ違ったのは家族で撮った写真の中に彼女の予想だにしていなかったモノが写っていたことだ。
 「エイ!」とスイカに棒をヒットさせる目隠しをした朱美の写真には、赤い虫刺されのような痕が シッカリ とお尻の下についていた。


 撮影者は、もちろん 確信犯 に違いない。


 P-kan! 常夏 ココナッツ。5 <・・・ 6(終) ・・・> あとがき

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