P-kan! 夏 ココナッツ。2


〜Sumire and Akemi〜
 エッチ度=★☆☆☆☆
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 キャー、とどこからか黄色い声が上がって、ふとビーチバレーに熱中していた朱美はギョッと目を瞠った。
(す、菫さんってば、何やってんのさ!)
 若い女の子二人に囲まれて、鼻を伸ばしている夫(にしか、朱美には見えない)にわなわなとビーチボールを持つ手をふるわせる。蒼馬の手をハシッと掴むと、ズンズンとパラソルの方へと近づいていく。

「 菫さん? 」

 仁王立ちに近い格好で、声をかけると「何してるの?」と若い彼女たちを見る。
 (とってもとっても楽しそうねー!)という朱美的最上級の厭味をこめた笑顔は、顔を見合わせる彼女たちの手のカメラに向けられる。
 菫がニッコリ笑って、答えた。
「写真、撮りたいんだってさ。朱美も撮ってもらえば?」

「え……あの。そう、なんですけど……」
「や……ちょっと、違うかも……いえ、なんでもないです」

 ブンブンと首を横に振って戸惑う彼女たちを見るに、本当の趣旨は菫の言葉から 少し 外れているのだろう。しかし、だからといって、それをご丁寧に訂正するほど朱美はお人好しではない。
「ふーん、なるほどねー?」
 チロリ、と彼女たちに形ばかりの微笑みを浮かべて、居心地悪そうに突っ立っているのを眺めやる。
(ちょっと、かわいそうかしら?)
 もともと、菫にはこういう類の声をかけられることが多い。仕事でもその長身とバランスのとれたスタイルで臨時のモデルとして自ら舞台に立つこともあるほどの見栄えのいい人だし、ぼんやりとしているのは傍から見れば「クール」で無節操に女の子に甘いのは「優しさ」に映るし、とらえどころない言動は「魅惑的」と謎めいた想像を生むらしい。
 トドメは、いつも浮かべている優美な微笑みである。大抵の女性は、これで騙される。
 ホントは、ボケてて女好きで普通のヘンな ヒト じゃない人でも!
 ああっ! なんか、ややこしいっ!!
「にーに」
 と、ちょうどヒョイと顔を覗かせた由貴に、彼女たちの目が輝く。
 キャー、と甲高く反応すると、「かわいーいー」「撮っていいですか? いいですかー?」と朱美に訊いてくる。
「いやーん、人形みたいや。むっちゃかわええ、旦那様似ですか? ええなあ」
「ボクも入って入って、奥さんも……ステキ。絵になる家族やね!」
 そう、褒めちぎられると朱美も悪い気はしないので、「まあねー」とカメラに向かって笑顔を作る。
 昔からこういうトコロは変わらない。機嫌を損なってもすぐに浮上するし、誰とでも気兼ねなく仲良くなれるのは彼女の美点だった。
「ホラ、蒼馬。あっち……なに、ブーたれてんの?」
「母さんに、言われたくない」
「なによー、それ。生意気よー」
 母子の可愛い程度の憎まれ口の応酬をして、パシャリとカメラにおさまった。



 パシャパシャと撮られる間にノリノリになった朱美は、若い二人と仲良くなって別れ際には写真を送ってもらう約束まで交わしていた。
「じゃあ、送りますねー。朱美さん」
「はいはーい、お願いしまーす」
 手を振って彼女たちが去っていくと、プーイと菫から顔を背けた。

「朱美?」
「なによー、菫さんのカバ。スケベっ。えっち。女っタラシ!」

 覗きこむ菫から、ツンと顔をさらに背けて朱美は「知らない」と背中を向けた。
(なんだ、やっぱり怒ってるのか)
 菫はなんとなく嬉しくて、その頑ななうなじから顎のラインにかけてを眺めて微笑んだ。


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