あの頃。
彼女 に…… 唯子 に好きになってもらえるなんて思ってなかった。
だから――。
マンションの扉を開けて飛びこんできた、制服姿の彼女に驚いた。100号近い純也のキャンバスを 一人 で持ってきた彼女は、当然だけれども怒っていてある意味とても貴重だった。
だが。
もっと、驚いたのは怒った彼女の言い分だった。
「わたしが好きなのは、純也先輩なんです!!」
「え?」
最初、彼女なりの優しさなのかと思った。けれども、純也が信じなければ信じないだけ……唯子は頑なに訴えて彼の心を乱していく。
「どうして、信じてくれないんですかっ? わたし、こんなに ハッキリ 言ってるのに!」
どうしてと問われても、純也には答えようがない。
信じられない。
一方的だと思っていたから――唯子は純也にとって触れることのできない存在、触れてはいけない少女だった。
触れれば、彼女を堕としてしまう。
その白い翼を手折って、二度とは天上に戻れないように……無理矢理にでも縛ってしまう。
気づいていたんだ。
大きく叫んだ唯子を、純也は覗きこみ……その手を止める。
「 唯子 」
(冗談、だろう?)と純也は表情を強張らせる。
彼女は自分のブラウスに手をかけて、ボタンを外す。ひとつ、ふたつと手をかけて肩から滑らせて落とした。
スカートも同様にホックを外して、床に落とす。
ブラとショーツ、それに白いシミーズだけの危うい姿になって……頬を染めた 天使 は 純也 を、誘惑した。
「 信じてください、わたしは本当に先輩が好きなんです 」
〜 02.ドアを蹴破って 〜
純也の部屋に入って、唯子はあの時と同じように服を落とした。
違っているのは、彼に背中を向けていたこと……と、カーテンを引いて電気もつけず薄暗くしてもらったこと。それに、私服……だったことだった。
上半身は裸、ズボン姿の純也は背中から彼女を抱きしめて、訊いた。
「本当に、いいの? 今度は……止められないかもしれないよ?」
君が、どんなに嫌がっても。
「だから、いいって何度も言ってるのに。どうして信じてくれないんですか?」
首から回った彼の腕に両手を乗せて、唯子は純也に頭を斜めに傾けた。
栗色のふわふわとした髪が、鼻先をくすぐる。
もしかしたら、唇を尖らせているのかもしれない……と思うと、口の端がわずかに上がった。
熱いような耳朶に唇をつけると、ピクリと緊張する愛しい体。
俯いていたかと思うと、ふり返って唯子は言った。
「純也先輩が好き。……だから、責任取ってください」
大きなまあるい目がしっかりと純也を見上げて、頬を染める。
ギュッ、と彼女に廻した腕に力をこめて、純也は抱きしめた。
唯子は、真綿のようだった。
ちいさくて、やわらかくて、あたたかい。
手の中に、あの会いたくて、近づきたくて、何よりも欲しかった 少女 がいる。
「僕も、唯子が好きだよ」
彼女の唇にキスをして、向かい合うとその顎を持ち上げてさらに深く唇を合わせた。
「……ん」
祈りの形に似た唯子の両手を自分の背中に廻させて、約束させる。
「唯子、辛かったら引っかいてもいいから……わかった?」
目をギュッと瞑っていた彼女はうっすらと瞼を上げて、頷く。素直に抱きつくと、純也にされるがままにベッドに横たわった。
*** ***
プツン、と背中のホックが外されて、唯子の胸を包んでいた白いブラが浮いた。
ストラップを肩から滑らせて抜くと、シミーズの下でふくよかな白い胸が透けて見える。なんとなくその情景がたまらなく純也を興奮させて、シミーズを脱がそうという気にはならなかった。
上から胸を手にして、寄せ上げる。
「っあ……ぁん、んん!」
広がった栗色の髪が、広い草原のようだった。
風になびいて、波立つ。
弱々しく首を振って耐える唯子の頬にキスをして、「声、我慢しなくていいから」と言い添える。
「はい」と答えて、唯子はそれでも唇を噛んだ。
「でも、なんか……変な声で、恥ずかしいんです」
「変な声じゃないよ。そういうの、なんていうか知ってる?」
くすり、と笑って答えを待つと、彼女は首を振った。
「可愛い声」
「っやん!」
固くなりかけた……胸の先を両方同時に摘まんで捻った。
手のひらにあまる唯子の、二つのふくらみは次第に熱を帯びていく。固く起ちあがるつぼみが主張をはじめて、彼女は苦しげに息を吐いたり、悶えたりした。
「や……あっ! せんぱいっ……あんまり強くしちゃ、いやっ!」
涙目になって訴えてみせても、もう遅い。
純也の唇は首筋から鎖骨、二の腕……そして、脇のそばを通って曲線をのぼる。
「……ッ!」
一際、大きく体を跳ねさせて唯子は息を呑んだ。
純也に啄ばまれたつぼみに顔を向けて、彼の視線と絡み合い、さらに体の熱が上昇する。
着たままのシミーズは、いつの間にか胸の上に寄せ上げられていた。
「せんぱ……ぅ、あ?!」
唯子の胸を離れた純也の片手は下方になぞるように落ちて、ヒップラインを滑った。太腿、その裏を愛撫しながら不意にやったのは下着をはいた唯子のお尻の割れ目に後ろから指を立てること。
「きゃっ!」
ひくり、と尾てい骨に震えが走って、足が意思とは関係のないところで勝手に開く。
ショーツの前から手のひらを入れ、割れ目をなぞる彼の指をぬるぬると滑らせる。
少し、奥に入れるとくちゅりと音を響かせる程度に……中はすでに濡れていた。というか、ぐちょぐちょだ。
自分でそれに気づいた唯子は、真っ赤になって横を向き顔を隠す。
「……ちょっとだけだから」
自分の肩に置かれていた彼女の手をシーツに避けて、純也はつぼみから唇を離すと、いきなりショーツを下にずり落として、片足から引き抜いた。そのまま、肩にその足を担ぐと開いた付け根に指を滑らせる。
キュッ、と唯子の指がシーツを握って、衣擦れの音を響かせる。
足がビクビクと蠢いた。
割れ目を開き、指を入れるとすぐに溢れてくるぬめぬめとした液体。粘りのあるそれは、指を出し入れさせるだけで、やらしい音を生み出す。
ちゅ、ちゅと舌をそこに這わせて、純也はポツリと呟いた。
「唯子、もしかしなくても感じやすい?」
「ひゃっ! は、はず……恥ずかしっ……そ、そんなこと知りません!」
唯子自身、こんなことは初めて知った。まるで、体全体が彼女の中に繋がっているかのような感覚。触れられるだけで、沸騰しそう。
一方で唯子の中、もう一方で唯子の胸をいじる純也の指に翻弄される。
自分のものではないような、乱れた声を上げて、小刻みに体がふるえはじめて止まらない。
加わる刺激にどくどくと出てきたモノを舐めとる彼の行為が、彼女をさらに羞恥に晒した。シーツをギュッと掴んで、耐える。
「はっ、あ! やっ! やだ、やだぁ……もう、やめて……ください。せんぱ……それ、イヤ。いやなの……せんぱい……」
ぴちゃぴちゃと唯子の感じやすい体に夢中になっていた純也は、弱く抵抗し、嗚咽を洩らしはじめた唯子の声にようやく顔を上げて慌てて身を起こすと、彼女のそばまで戻って抱きしめる。
自分の行動が不安にさせてしまったんだと、ゆっくりと覗きこむ。
「ごめん、可愛くて。つい……泣かないで?」
「……もう、やだ。もう……こんなの、やっ!」
ポカポカ、と彼の胸に拳をぶつけて横を向く。
幾筋も涙が流れた頬が濡れて、かすかな光の道を示す。
ふっくらとした頬のラインは真っ赤に染まって、熟れたリンゴのようだった。ペロリ、と舐めるとしょっぱい涙の味がする。
「は、ハジメテなのにこんなの、おかしいんでしょ?」
そんなことはない、と純也は親指で彼女の傷ついた横顔を撫でる。
「唯子は感じやすいんだ……でも、全然恥ずかしいことじゃないよ。むしろ、僕は嬉しいかな?」
「……どう、して?」
「だって。痛いだけじゃツライだろう? だから、意地悪してたんじゃないんだ……僕は、唯子にも気持ちよくなって欲しいから。でも、ごめん。傷つけた」
頬に優しい唇を感じて、唯子は不安だった気持ちが溶けていくのを感じた。ううん、と首を振って、「だったら、いいの」とまだ目を合わせるのは恥ずかしくて彼の背中に腕を廻して抱きつく。
嫌われないなら、いい……と、胸と胸が重なって感じやすい彼女はそれだけで変な声を上げてしまったけれど……気にならなかった。
「唯子……いい?」
「……うん」
純也の問いに、コクリと頷いて……「あのさ」という改まった言葉に、首を傾げる。
「ちょっとだけ、離れてもらっていい?」
どうしてだろう? と思いながら腕を離すと、カチャカチャとベルトを外す音と何かを破くような音が響いた。
戻ってきた彼に、唯子は真っ赤になりながら抱きつくと、申告した。
「先輩、いまの すっごく 感じちゃった……かも」
「 唯子 」
と、純也は彼女を仰向けにベッドへと押しつけ、顎を取ると、襲いかかった。
性急な接吻〔くちづけ〕に唯子は対応する間もなく、自由を奪われ、下敷きにされる。
「……ッぁ!」
左右に広げた足の膝裏に純也は手を入れ、さらに深く体重をかけて折り曲げた。
キスの合間から、苦しげな唯子の声が洩れる。
潤い開いた入り口にあてがわれた固くて、大きな、熱い 感じたことのない感触 に、彼女は目を見開いて、その持ち主をしっかりと見つめた。
ぐっと純也が中に入ってきた瞬間に、唯子は軽くイってしまったのか……あまり痛みに関しての記憶がない。
変な大きな声を出しちゃったこととか、その時の魂が飛ぶような感覚の方が強すぎたせいかもしれない。
もちろん、痛かったような気はする。
するのだが……揺すられている間は、そんな感覚はどうでもよかった。――気がつけば、部屋から覗く太陽はかなり傾いていて、彼が唯子の長い髪を梳いていた。
目が合うと、微笑む。
「純也先輩……」
「体、平気?」
「あ。はい、それは……平気です」
頷いて、当然なのだが……まだ、裸のままの自分の姿に恥ずかしくなる。
ジンジンとした行為の余韻。
でも、もしかしたら純也にキレイにされたあとかもしれない、という予感。
だって、べたべたした感じがないし、彼からは微かだったけれど石鹸の匂いがした。
シーツを抱きしめて、訊く。
「あの……純也先輩」
「なに?」
それは、彼女にとって とても 気になることだった。
>>>つづきます。
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