姫君 夢見るウサギ、恋するオオカミ-6


〜NAO's blog〜
 夢見るウサギ、恋するオオカミ5 <・・・ 6 ・・・> 夢見るウサギ、恋するオオカミ7



 驚いた志穂が、潤んだ瞳で広之を映して「どうして?」とまったく理解できないとばかりに首を傾けた。



〜 夢見るウサギ、恋するオオカミ6 〜


(なんだ、俺の勘違いか……)

「あっ、あ……鳴海くん」
 水着の下で胸をまさぐる手のひらと、下腹部を蠢く指先に志穂は問うように潤んだ目で背後を気にする。
 入りたい、とまで言ったのに、彼の入る気配が まったく なくて困惑しているという風情だ。
「入れない」
「え?」
 どうして、と煽るだけ煽られた女の体は、期待を裏切られたとばかりに彼の指を締めつけてイヤイヤと訴えた。
「今は……指だけでいって。埋め合わせはするから」
「……ん、やっ。あ……それ、ほし……いれて……あっ、あっ」
 思考回路が飛びはじめたらしい志穂の口は、朦朧とそんなやらしい言葉をうわ言のように喘いで、広之に下半身を擦りつける。
「いい子だから、我慢して。いって」
「やっ、やぁっ」
 自らも苛烈な忍耐を強いられながら、広之は彼女の中の弱いところを差し入れた指でこれでもかと責めぬいて一番敏感に起った突起を水着越しに後ろから突いた。
「あ、ぁあん!」
 もどかしいほどの刺激に――けれど、志穂は耐えきれずに昇った。


*** ***


 背中のほどけたヒモをきちんと結びなおしてくれた彼は、志穂に自分のパーカーを着せた。
「脱ぐなよ」
 と、念を押されなくても……志穂は、もう コレ を脱げないだろうと思う。
 自らを抱くように服を引き寄せて、目を閉じる。

(鳴海くんの匂いがする――)

 それだけで。
 いま。
 彼に抱かれている、気がした。


 パシャン、と海水を引っ掛けた広之に、志穂は何が起こったのか分からなかった。
 口の中に広がる独特の、苦味。
 口元を押さえ、無理矢理に嚥下した時のむせ返る感覚を思い出した。

(そうだ。わたし……彼のモノを呑んだんだ)

 ぼんやりとした思考でそこまで考えて、今の状況に身動きがとれなくなる。後ろ抱きにされた状態で、今は岩場のほど近くの波打ち際の砂浜に二人して座っているのだが。
「な、なるみくん」
「ん……触らせて」
 志穂の首筋に唇を寄せた彼は、意識を回復した彼女にふたたび吸いついた。
「さ、さわっ……て? やぁん」
 腹部に片方の腕を廻され、逃れることができない。背中から胸に、もう片方の手は水着の中に入って彼女の胸を形を探るように滑る。
「だめー……」
 それは、むしろやらしい動きできなく……確認するような事務的な動きだったけれど、いまだ過敏な先に触れると志穂の体は小さく官能に震えた。
「やらしい体」
 くすくす、と彼は笑って、志穂の固く実った先を捉えてやわやわといじるから、たまらなかった。
「ち、ちがう。鳴海くんのせいだもん……さ、触っちゃ、やっ!」
 悪戯に動こうとする指先を水着の上から押さえつけ、志穂は抵抗する。
「どうして? また、したくなるから?」
 背後の声はからかうように言って、「やらしい体だな」と繰り返した。
 そうして、腹部に廻されていた腕も下降するように動いたものだから、志穂は慌てて足を閉じてガードする。
 恥ずかしいけれど、広之の言うことも外れてはいなかった。

 こんなふうに触られたら、したくなる。

 女の子だって、欲情するのだ。
「や、やらしくないもん。鳴海くんが……触るから、だから」
「したくなる? いいよ、しても。する?」
 そう広之が言ったが、志穂は思いっきり首を振った。
「いや、だもん。ここじゃ……だって」
 繋がりあえない。
 避妊具がないから、せいぜい出来て先ほどの前戯程度になってしまうのだ。
「だって? なに?」
「………」
 志穂のことを見通す広之が、先を促すけれど志穂は口になどできなかった。それこそ、自分が「やらしい」ということを自分から 彼に バラすようなことだ。
「最後まで出来ないから? そうだよな?」
「………」
 口にすることはできない。けれど、彼を誤魔化すことも彼女には無理だった。
 コクン、と頷いて、「どうせ、やらしいもん」と耳まで真っ赤になる。
 そんな目に見えて落ちこむ彼女に、広之はくすりと笑って「大丈夫」と優しく耳元で囁いた。

「俺も、最後までしたいから。今夜は寝かさないし、覚えとけよ」

 恥ずかしいのに、その言葉が嬉しかった。


 >>>つづきます。


 夢見るウサギ、恋するオオカミ5 <・・・ 6 ・・・> 夢見るウサギ、恋するオオカミ7

BACK