泣けばいい。
甘えて。
泣き叫べばいいんだ――。
ザザン、と岩場に波が打ち寄せる。
遊泳場所から外れたその波打ち際は、ゴツゴツとした岩場に挟まれた日陰にある。陽のあたるところがイモ洗いに近いのに対して、そこは人影もなくひっそりとしていた。
〜 夢見るウサギ、恋するオオカミ5 〜
「……っアッ」
が、だからといって決して人が来ない場所なのか……と言えば、そうでもない。
陽のあたる場所からすこし足を伸ばせば、誰にでも入ることのできる空間。遠く喧騒の聞こえる岩場に手をついて、志穂は何がどうなっているのか理解できていなかった。
海に来たのは、彼と仲直りしたかったから。なのに、自分の水着姿を見ても、広之の態度は変わらずどちらかと言うと遠ざけられてる気がした。
今も、たぶん、すっごく怒ってる。
それがよく分からなくて、悲しかった。
「や……ダメぇ、鳴海くん」
広之の手が、水着の上から彼女のふくらみを揉みしだく。
片手を岩について体を支え、志穂は震えるもう片方で動き回る彼の手を制しようと試みた。
けれど。
「やっぱりだ……この水着にはパットさえ入ってない。ここが固くなったら、すぐにわかる」
「あっ……」
「しかも、白なんて。なに、考えてるんだ?」
彼の腕を掴んで制しても、その指の動きまでは止められない。水着の上から、固く敏感に起ちあがった先を摘みあげられ、背中がビクンと反り返る。
「あっ、な、るみくん……」
「志穂の体が淫乱なのが、みんなにバレてもいいの? それとも 誰か の気をひきたいのかな」
「……ッ」
涙目の志穂は、背中にぴったりと張り付いた彼に顔を上げて、ビクンと震える。
それは、官能の震えではなくて……広之の指摘が的を射ているがゆえの反応だった。
(……どうしよう。どうしたらいい?)
広之は手を止めて、腕を制しながらも黙りこんだ志穂を冷たく見下ろす。
「そうなの?」
コクン、と頷く志穂の耳は真っ赤で、顔を見なくても表情が読めた。
「……だって」
「だってじゃねぇよ」
低く、唸って広之は首の下にある志穂の水着のヒモの結び目を歯で噛んでほどく。そうして、緩んだ間から手を突っこんで彼女の素肌に触れた。
その彼の強行にビックリした志穂は、慌てて脇を締めるが男の容赦のない力には敵わなかった。
「アッ、ダメ……だめっ……やぁっ、ふぁ……ん!」
潤んだ声で訴え、振り仰ぐが間髪いれずに唇が塞がれて、口内を貪られる。
水着の下の二つのやわらかなふくらみを両の手で巧みに刺激され、彼女の胸はアッという間に張りつめる。
そうすると、片方の手が鳩尾から臍を通って下腹部へ――。
「ッ! ゃ、ぁっ!」
まさか、と思う。
キスから解放された彼女は危うく叫びそうになって、声を抑えた。
彼の手を制することなど、もう、できない。なんとか、声を封じなければ……こんなところを他人に見られでもしたら、と思うと怖くてたまらなかった。
けれど、まだ、志穂は広之が本気でことをなそうとしているとは考えていなかった。
「な、るみくん……こんな、こんなところじゃヤダよ。やめて……」
「志穂、そんな嘘をついても無駄だよ……海水じゃないだろ、コレは」
志穂の茂みをかき分けて指を動かすと、広之は溝に沿って指を滑らせた。
「あ……」
すでに潤った入り口に、中指の先を差し込んで襞を暴いていく。
「ふっ」
志穂の腰が、それにゾクリと反応して彼が本気なのだとようやく悟った。
「な、なるみくん……」
切ない声で彼を呼ぶ。
「俺の慎み深いコレを煽ったんだ、責任は重いよ」
耳朶に唇を添えて、水着越しに熱を孕んで反った自身を押し当てる。
(い、いつ煽ったんだろう?)
と、志穂は戸惑いながら受け入れる体がふるえた。
「……で、でも」
「志穂に入りたい。イヤ?」
*** ***
躊躇う彼女に広之は後ろから囁いて請う。本当は、許してもらえると思っていなかった。
だから、彼女がふるふると首を横に振った時……拒否の意味だろうと単純に考えた。
「イヤ、じゃない。鳴海くんだから……いい、よ」
「え?」
「この水着だって、鳴海くんと仲直りしたくて買ったの。しょ、祥子ちゃんにはビキニの方が男の人は喜ぶって、言われたけど……は、恥ずかしくて」
「 ……真鍋に見せる、ためじゃなく? 」
「え、真鍋くん?」
>>>つづきます。
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