焼けと机と室と。 blog3-4


〜NAO's blog〜
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 小槙から奉仕するという めずらしい 体験に輝晃はとりあえず現状維持のままでもいいか、と思い直した。
 考えてみれば、「恋人」という時間も貴重だし……小槙がここまで想ってくれていると一生懸命、意思表示してくれるのも、不安定な今の関係だからこそという気がした。


『輝くんかて、わたしのこと信じてへんやん。どうしたら、信じてくれるん?』

 そう言って、いつもなら絶対にしないような大胆なことを恥ずかしがりながらも彼女は輝晃のなすがままに、してみせた。

『好き。大好きやから……輝晃くん』

 何かの呪文のように唱えて、裸の彼女は乱れた。
(また、してくれへんかなあ……)
 と、昨晩のことを思い出していたが、朝起きた時の小槙の恥ずかしがりようだとしばらくは期待できそうになかった。
『み、見んといて……もう! 輝くんのアホ。スケベ!!』
 冷静になって思い出したらしい彼女は、そう輝晃をなじって、彼の顔を見ることもできずに布団の中に潜〔もぐ〕ってしまったのだが――。



〜 エピローグ 〜


(そういうトコも可愛くて、朝からしてしもたなんて俺も節操ないよな……)
 反省はするものの、小槙の朝の真っ赤になった表情を思い出すだけでニヤけてくる。
「 ヒカル 」
 と、呼ばれてそっちへ目を向けると、疲弊した野田が立っていた。
「ああ、どうだった?」
 今となってはどっちでもよかったが、ヒカルはおくびにも出さずに確認した。
 まあ、野田の浮かない表情を見ると、大体の察しはつく。

「 しばらく、我慢してもらえませんか? ヒカル 」

 苦渋の選択という野田の一言に、(やっぱりね)と思う。
 チロリ、と彼をつとめて冷ややかに見つめると、交換条件を提示してきた。
「今は、一週間のオフで……お願いできませんか?」
「――イヤだと言ったら?」
「……それは、仁道弁護士とのお付き合いも考え直してもらうことになるかと」
 苦々しげに、野田は言った。
「ふーん」
 予想していたとは言え、ヒカルは窮屈さを感じた。
( 仕方ないけど、な。こういう世界だし )
「わかったよ」
 渋々、譲歩するフリをして、念を押す。
「一週間のオフ、「もらい」だからね。野田さん」

「はいはい」

 野田はやれやれと相槌をうって……やけにアッサリと引いたヒカルに化かされたような気分になった。


*** ***


 しばらく、輝晃の顔は見れないだろうと思っていた矢先から、携帯電話に彼からの連絡が入って小槙は普通ではいられなかった。
 何もしてないのに、顔が熱くなって思い出す。
 ――乱れた自分。
(あ、あかん。昨日の アレ は恥ずかしすぎる……)
 なのに、電話の向こうの相手は、まったくいつもと変わらない様子で憎らしいほど上機嫌だった。
『小槙? 今朝は悪かったな……ツラくないか?』
「……言わんとって。思い出すから」
 さらに熱が上がった小槙は輝晃の謝罪を遮って、「なに?」と先を促した。
 受話器の向こうで、少し笑う気配がして輝晃が言った。
『ああ、うん。一週間のオフがもらえるから、どっか行こ?』
 海外とか……と、続ける彼に小槙は「うん」と頷いて、頷きながら首を傾げた。
「でも、大丈夫なん? 一週間やなんて……野田さんに 無理 言うたらあかんよ」
『大丈夫大丈夫、野田さんから「一週間オフ」って言うてきたんやから』
 釈然としない説明だが、長い休暇は初めてだ。
 「旅行」という甘美な響きに、嬉しくなる。
「だったらいいけど。旅行って、わたしと行っていいもんなん」
 折角の長期オフなのだし、のんびりしたいのであれば、小槙がいない方がいいのでは? と、気になる。

 しかし。

『 小槙以外の誰と行くいうねん 』
 と、輝晃はつべこべ言うなとばかりに語気を強め、彼女にも休暇を取るように言付けた。


 >>>おわり。


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