輝晃のマンションのリビングに入って数分、ソファに追いつめられた小槙は「やぁっ!」と切迫した悲鳴を上げた。
「馳くんのウソツキ! ゆっくりする……いうたやん」
ソファの背もたれに頭を沈め、小槙のセミロングの黒髪が広がった。
ほどよくはだけた格好に、輝晃は悪びれもせずに目を細めて堪能する。
「はいはい。わかってるって」
(わかってへん! 絶対や、絶対わかってへんやろっ!!)
スーツとブラウスの間から覗く素肌、それに純白のレースのブラが胸の上に押し上げられている。
見えそうで見えない、色づく胸の頂も男心をくすぐった。
「ど、どこ見てんねん……馳くんのスケベ」
乱れたスーツとブラウスの下に手を潜らせた彼は、彼女の控え目な胸をまさぐった。
そして、もう片方の手をスカートの中の太腿へと這わせる。
ビクリ、と一気に緊張した小槙に輝晃は少し、困ったように笑った。
〜 blog1‐3 〜
「 怖い? 」
それは、彼女が再会してすぐに 確かに 伝えていたことだ。
素直な彼女は、睨んで……涙目になりそうなのをなんとか堪〔こら〕えていた。
「こんなん怖いに決まってる……そこかて、触られるんは……あの時以来や」
下着越しに彼の指を感じて、小槙はあの日の夕陽を思い出した。
怖いのに、やっぱり嫌がらない身体の理由が今はわかっている――。
「なあ? 馳くん、ココ笑うところなん?」
胸元に顔を埋めてくすくすと笑う輝晃に、小槙はそことは別のところに潜りこんだ彼の指に翻弄されながら眉を寄せた。時折、口をついて出る自分の声とは思えないやらしい喘ぎにどうしたら止められるのか真剣に考える。
口を手で押さえた小槙に、「嬉しいわ」と輝晃がなだらかな胸の丘に口づけながら上目遣いで言った。
強く、抱き寄せられる。
「怖いのに。ココを俺に許してくれたのは、なんでなん?」
や、と小槙は触れた輝晃の指先にふるえた。
「わたし、ずっと怖かったんや。馳くんが」
「 俺? 」
心外だと、輝晃は思った。
ことさら、小槙には紳士的に接していたつもりだ。あの転校の日 以外 は――。
「好きになりそうやった。でも、本気になっても傷つくんは……わたしやろ? せやから」
いきなり、起き上がった輝晃に小槙が目を瞬〔しばた〕かせた。愛撫も一時中断して、彼はひどく真剣に訊いた。
「どうして、そう思うんや?」
「え?」
「俺が小槙を傷つけるワケがないやろ? ずっと、特別やった。おまえだけが気づかへんかっただけや」
輝晃の告白に、小槙はビックリして「嘘や」と口走った。
「……冗談や、ないの?」
「おまえなあ、鈍すぎや。俺は、「冗談」で仁道小槙を抱こうとは思わん……どうしてやと思う?」
前髪をクシャとかき上げて、輝晃は乱れた前髪の間から小槙を見た。
首をふる彼女へ、ニヤリと笑うと抱き上げる。
「きゃっ」と、その行動に驚いて小槙は輝晃の首にしがみついた。
「俺は。おまえに嫌われるんが、一番怖いんや」
と、彼女の耳元へ唇を寄せた彼が答えた。
深いブルーのベットに下ろされ、中途半端に脱がされた衣服を完全に取り払われた小槙へ輝晃は最後の了解を得た。
「眼鏡、外してもええ?」
布団にくるまって、肌を重ねた生身の温もりに小槙はもじもじと身をよじって恥らう。
「ええけど……馳くん」
「輝晃」
「え?」
「ええ加減、「馳くん」はないやろ。それとも、仁道はただの幼馴染とこういう関係になるつもりか?」
「……でも」
小槙は困惑して、懇願するように彼を見上げた。
「でも、やない。俺と付き合うつもりがあるんやったら、眼鏡を外して……名前を呼んで。そしたら、――全部やるわ」
ジッ、と憂いのある眼差しに囚われて小槙は自分の眼鏡に手をかける。
ゆっくり外して、視界がぼやけた。
「輝晃くん」
手にあった眼鏡を奪われて、次に来た衝撃に脳天がしびれる。
「小槙、泣くな……かわいすぎや」
動く彼にしがみついて、爪を立てた。
「 やアッ! 」
激しい波が押し寄せて、小槙は何も考えられなくなった。
>>>つづきます。
blog1‐2 <・・・ blog1‐3 ・・・> blog1‐4
|