朝、出勤しなくちゃ……と鳴り響く目覚まし時計に手を伸ばそうとして、その存在にハッとする。
「 湊! 」
〜 たぶん、晴れ。 〜
「ん? あ……和美さん。おはようございます」
朝の至福が微笑んでる、とついつられて「おはよう」と返して、違う! とキッと彼を睨んだ。
「それどころじゃないってば! もう、七時なのに。どうしてのんびりしてるのっ?」
「え? 何がですか?」
と、不思議そうにする湊にイラッとした。
「仕事! もう、番組始まる時間じゃないっ」
ホラ! と和美が時計を手に迫ると、彼はポカンとして次に笑った。
そのあまりの無邪気さに怒っているのも絆される。
(くぅ! なんて朝の似合う子なのっ。流石よ、由良くん)
「和美さん。今日、土曜日ですよ? 僕は基本、土日は休みなんです」
「へっ? そうなの? ……そういえば、平日しか見なかったかな? 駄目ねぇ、シフトで働いてると曜日感覚が鈍くて」
「和美さんは今日も仕事?」
ベッドの上で彼は訊き、和美は頷いた。
「そうよ。土日のどちらかは基本出勤なの。今週は土曜出勤で明日は休み」
支度をしようとベッドから足を下ろして、羽織っていたブラウスの前を留める。下着も履いて、と視線を感じて振り返ればジッと湊が見ていた。
「な、なに?」
「せっかく今日一日一緒にいられると思ったのに、残念だな……と思って」
心なしかシュンとなった彼に、和美の母性本能がくすぐられる。
今の今まで、年下男なんて眼中になかったのに由良湊に関しては「別格」だと認めるしかなさそうだ。
「湊、ごめんなさいね。明日は休みだから……」
「うん、だよね? じゃあ、今日は何時に終わる? 迎えに行くから、外で何か食べましょう」
にっこりを笑って誘う彼に頷いて、和美はつられるようにまた微笑んだ。
「そうね、じゃあ……」
纏わりつくみたいに朝の支度を手伝った彼は、玄関先で和美の頬にキスをした。
「じゃあね、今日一日頑張って?」
「う、うん。湊も、気をつけて帰ってね」
慣れない若い恋人同士みたいな朝の風景に、今更自分が立たされるとは思わなかったと頬が熱くなる。
(甘い、甘すぎ……やっぱり、若いわ。ついていけるかしら、わたし)
「和美さん」
「え?」
俯いていた顔を上げれば、傘を持つ彼女の手を掴んだ彼はニッコリと微笑んで、取り上げた。
「今日は晴れだよ。傘はいらない」
>>>つづきます。
出会い-3 <・・・出会い-4 ・・・> 誘惑-5
|