ごめんね、イチ……と思う。
ここは、物分かりのいい友達を演じるべきところなんだろうな。でも、無理……全然ムリ!
だって、好き。
あなたが 大好き なの。
〜 step.7 〜
「姉、なんだけど」
「 へっ?! 」
「聖也! アンタねー少しは間をつくりなさいよっ、ツマンナイでしょ?」
「姉さんのためにつくる間はないよ」
「なんですって?」
「………」
姉、あね、同じ親から生まれた年上の女子、つまりイチの身内っ。
うわーっ、はじめて見た!
そっかー、顔立ちが好みだと思ったらイチと似てるんだ。整ってるワケじゃないけど愛嬌があって、どことなく優しい感じ。癒し系、って言うの? 女の子にしたら、すっごく可愛いんだなー。気付かなかった。
イチに文句を(見た目とは違って結構性格はキツいのかな?)マシンガンのように発射していたお姉さんが、こっちを見たから必然的にわたしと目が合った。
「わっ! すいません……えっと、二宮穂乃香です。はじめまして」
自分の最初の態度があまりに失礼だったことに気付いて、慌てて頭を下げる。
まさか、お姉さんだったとはっ!
第一印象最悪じゃんっ。
「ホントにねー、弟の部屋でそーんな格好の女の子に敵視されるなんてビックリよ。聖也は真面目なんだから、遊びならやめてやってね。ホラ、前に会った 清楚な 女の子の方が聖也には合ってると思うな♪」
最後の言葉は、隣にいるイチに対してのお姉さんの言葉だ。
ズキッとする。
そう。きっと、それがイチの 本当の 彼女なのだろう。
「遊び」そんなつもりはないけれど、確かに今の状況を見ればお姉さんの心配はもっともだった。
自分のブラウスの下から伸びた何もつけてない生足を見つめて、ぐっと唇を噛みしめる。
「着替えて、きます」
ペコリ、と頭を下げて寝室に戻る。
戻ろうとした時に、イチが来て「気にするなよ」と言ってくれたけど……落ちこんだ。
(ダメだー、失敗した。彼の身内に嫌われるなんて……ありえないよ)
ニノ、一生の不覚です。
*** ***
キチンとした服装に着替えてからイチと目覚めのコーヒーをとった。けれど、目覚めのコーヒーってほど雰囲気は甘くはならない。
そこには一緒に彼のお姉さんが座っていて、イチにメニューの注文をつけ、何故かわたしの前にも立派な朝食御膳が並べられている。
ふんわりご飯と赤ミソお味噌汁にこんがり焼き魚。だ、大根おろしまで。
ふわあ! イチ、完璧だよ、垂涎モノだよ、惚れ直したよっ。ステキ!!
「いただきます!」
手を合わせて、張り切ってお箸をお味噌汁に投入。うふふ。
「シュンとしてたクセに図々しい子ね? 図太いっていうか欲望に素直っていうか」
ん? なんか小姑みたいな厭味を何度も言われた気もするけど、心象が悪いのは諦めていたので黙っていた。
「図々しいのは姉さんじゃないの? それに、素直なのはニノのいいところだよ。姉さんみたいに打算で演技なんて器用なことできないんだから」
代わりに、イチがフォロー(?)してくれて最後は姉弟ゲンカ? みたいになって、慌てて止めた。
「あ、あの……イチ。わたしは平気だから……わたしが失礼だったのは本当だし」
「ほら、見なさい。この子だってちゃんと非を認めて別れるって言ってるじゃないの」
……え? そういう話?
「姉さん。もう、いい加減にしないと怒るよ?」
「なによ、やけに突っかかるじゃない。いつもはもっと淡白なクセに……あーあ、もっと苛めちゃおうかしら?」
「姉さん!」
わぁー! さらに姉弟間の空気がピリピリと険悪にっ。
イチが怒るなんてすっごい珍しいんだよ。お姉さん! は平然としてるけど……わたしは呆然。
ど、どうしよう――わたしのせい、だよね?
>>>つづきます。
step.6 <・・・ step.7 ・・・> step.8
|