二度目に起きた時、すでに本番が始まっていて驚いた。
最中にここがイチの部屋だと聞いて、さらにビックリ驚いた。
(ええっ! いいの? 彼女は?! イチって大物ーっ! ああ、一緒に住んでないのか……えー、でも、ちょっとヤバくない?)
ついついニマニマしてしまって、イチに見咎められた。
「考え事できるなんて、余裕だね……ニノ」
「やっ……ダメ! いやぁん」
「イヤって声じゃないよ」
くすくす響くイチの苦笑いにわたしは体を熱くして睨んだ。
だってぇ、イイんだもん。嘘はつけない性格なの……知ってるクセにっ。
〜 step.6 〜
朝から濃厚な交わりをかわして、体はぐったり、心はほどよく満たされてベッドにうつ伏せになって横たわり火照りを冷ました。
「コーヒーでいい?」
上半身を持ち上げたイチの問いに、ウンと頷いて、ベッドを離れる彼の背中をうっとりと見送った。
(なんか、恋人同士みたいじゃない?)
と都合のいい夢を見る。
まあ、夢から覚めるのは一瞬なんだけどね。
遠くチャイムが鳴って、誰かが来たのか寝室の向こう側から話し声が聞こえた。
(……女の、人?)
声の感じから、二人の仲が親しいことはすぐに分かった。
わたしは、急いで寝室の床に散らばった下着を拾って着け、上は簡単にブラウスだけを羽織ってそろりと扉から顔だけを覗かせた。
カウンターの向こうにあるキッチンでイチと、女の人が話している。
ツヤツヤの黒髪は腰まであって、背はイチの肩くらい。大人しそうな印象の大きな瞳を見開いたり、細めたりしている。
一途そうな、可愛い女の人だった。
まるで、わたしのコンプレックスを 形 にしたみたいな理想的な顔立ち。目立たないけれど、スタイルもかなりいいみたい。羨ましい。
そりゃあ、わたしだって見た目は悪くない。けれど、染めたような茶色の地毛はゆるやかなクセのせいで軽薄に見えるし、ややつりあがった目は気が強そうに……無駄に目立つ体の凹凸は経験豊富だと噂された。
(イチってば、ああいうのが好みなのかな? じゃあ、わたしって全然じゃん? 望み薄?)
挑んでも勝てる気なんてしないけど。でも――。
「イチ」
わたしは扉を開けると、顔を出し、「この人、誰?」と首をかしげて訊いてみた。
「聖也」
と、彼女もイチを問うように顔を上げ、イチは困ったようにわたしを見た。
>>>つづきます。
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