ち にの ん step.3-nino


〜NAO's blog〜
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「な……なん? なんでっ!」



〜 step.3 〜


 わたしの明らかな動揺にイチは首を傾げた。

「なんで初めてだってわかったか、ってコト?」
 その通りだが、頷くことはできない。パクパクと口の開閉を繰り返す。
「そりゃ、わかるよ」
 と、彼は苦笑した。どうやら、男の人からすると一目瞭然らしい。なんで?
「まあ、詳細は伏せるけど。ニノ、あの時痛がったし、血も……出たし、慣れてそうになかったしね」
「じゃあ、なんでやめなかったの? 面倒でしょ? 初めての女なんて」
 浮気ならなおさらだ。イチの行動は、わたしの 今までの 彼のイメージからすればかけ離れている。
 たとえ、それが男の本能なのだとしても、彼は変わってしまったのだろうか?
「やめるハズないよ。せっかくニノがその気になったのに」
 イチの表情はわたしに対してほんの少しの同情を含んでいた。
「え?」
 同情される意味が分からないんですけど……むしろ、わたしの方がイチに同情するよ。
 なんで、抱いちゃったの? って。
 わたし、喰らいついちゃうよ……スッポンみたいにタチの悪い女なんだからねっ。
 そっ、とイチはわたしの頬を手のひらで包んで、上向かせる。
「そんな顔しないで。もう絶対逃がさないし、手離す気なんてないんだ……ごめんね」
 彼の謝罪を理解するより先に口づけられて、裸の胸を揉まれた。そこが感じやすい場所だって、さっき初めて教えられたばかりのところを弄られて、わたしは始まってしまったことにすら気づかず、従うしかなかった。

 「ニノ、ニノ」って彼が動く。さっき、初めて雄の塊を受け入れた雌の入り口はやっぱりまだ慣れてなくて、疼く……その感覚はお世辞にも気持ちいいとは言えなかったけれど。
 体の痛みも、辛さも、息苦しさも、彼が与えてくれるなら嬉しいし、涙が出るほど幸せ、気持ちいいような気もしてくる。
 錯覚? ううん、ホントにイイかも。
「あっ、イチ……イチ!」
 中で。
 ビクビク跳ねる彼が、薄い膜越しに射精した。
 わたしの体で、彼が果てるのは一番の悦びになった。


*** ***


 それから何度か美味しいお店を教えてもらうついでに、そういう関係になった。
「イチって、ちょっと変わった……よね?」
「そう? 僕はむしろ全然変わってなくて自分で嫌になるけど」
 今日の料理は和風創作だ。刺身が美味しくて、色の調和もいい。知らず、箸が進む。
「そうかなー? すんっごく大人になったよ。昔も大人びてはいたけど」
「大人? 例えばどんなトコロが?」
 彼女がいるのにわたしと……なんてことは、自分の首を絞めることなので言えない。婉曲に、婉曲に。
「んー、女性に対して器用になった? とか」
「不器用だよ。呆れるくらいね」
「嘘だー」
 わたしは笑った。イチは「分からないならいいけど」と情けない顔で肩をすくめて……そんなところは高校の頃と少しも変わってなくて、なんだか無性に彼の言葉が本当のように思えてきた。

(そうかー、そうだよね。彼女がいるのにわたしと……しちゃってるんだもんね。イチからしたら不本意か)

 ごめんねー、と心の中で謝って、でも利用しちゃうよとその腕に甘え――わたしは、そっと彼に寄り添った。


 >>>つづきます。


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