再開された、執拗な脚への口付けにツゥエミールはズリズリと体を後退させ、すぐそこにあった壁に達して背中をつける。
そうして。
否が応にも目に映る行為に、羞恥する。
「イヤ、やめて下さい……レイ、っ」
足首を支配され、抵抗すれば膝が上がり余計にドレスの裾が乱れてしまう悪循環。レイドイーグと出会ってから学習しているハズなのに、ツゥエミールはまたしても抵抗をして自らを追いつめてしまった。
誘っているかのように、元々はだけた衣服はどんどんと乱れていく。
(イヤ、イヤッ!)
反応を見る澄んだ青の瞳と目が合って、ツゥエミールは涙目で訴える。
けれど、本当は解かっている。
彼には、懇願しても無駄だと。
沈黙しても、無視してことを容易〔たやす〕く成し遂げてしまう……そういう類稀な支配力を持った存在なのだ。
従順な身体は、従うしかない。
「……んんっ」
唇を噛んで、せめて声を押し殺す。
彼の舌が、太腿からついに付け根にあたるそこに触れた。
下着をよけて侵入してくる、生暖かなそれにツゥエミールはわなないて息を呑む。
そんなところに痕はないのに、と訴えたくても声にすることはできなかった。
口を開けば、上がるのは違う種類の嬌声だろう。
膝を立てた格好で座ったツゥエミールは、レイドイーグの手によって大きく広げられた両足を震わせて耐えた。
顔を背けて、目をきつく閉じる。
すると、皮肉にも自分に触れる彼の舌先や指先の存在が目に映るように感じられた。
濡れた卑猥な音、かき混ぜられる渦に翻弄される。
「ふ……あ、やぁ……」
弱弱しく息を吐いて、ツゥエミールはレイドイーグの蠢く頭を最後の抵抗に押した。
眩い金髪に埋もれた指のその力も、ほとんど撫でる程度で力が入らない。
「とりあえず、ここでは応急処置だな。ツェム?」
「え……? ひぁ!」
朦朧とした瞬間、目の前にチカチカと星が舞う。
「外側だけで」
「あ、ああっ!」
背中が弓反りになって壁に当たった。灰色に近い銀髪が張りつき、喉を仰け反らせると小刻みに身体を震わせた。
「中の消毒はじっくり、別の場所でやってやる」
身支度を軽く整えた皇帝が、言った。
「……そんなの、必要ありません。わたしは何もされてないんですから」
ぷい、と強いその視線から顔を背けたツゥエミールの怒りは頑なだった。
当たり前と言えば、当たり前だ。
レイドイーグの一連の行為が第二妃の機嫌を ひどく 損ねたのは言うまでもなかったが、皇帝は あくまで 「皇帝」のままだった。
「そんなハズはない。おまえだって、したいだろう? 私の方の 消毒 をな――」
悪びれた様子もなく鮮やかに笑うレイドイーグへ、真っ赤になったツゥエミールが白い枕を投げた。
*** ***
嫌がるツゥエミールを横抱きに抱き上げて奥の部屋から出てきたレイドイーグは、そのまま一瞥もくれずに横切って出て行った。
自室に戻る前に、ガリアゲイド医学卿に診てもらえとか何とか、腕の中のご機嫌ナナメな妃に命令しているのが聞こえてくる。
主に手首と足首についた、拘束痕が彼には気になるらしい。
「私がもし、妙な気になったらソレのせいだと思え」
「な、どういう意味ですか。ソレは……」
困惑しきりな妃は、出際チラリと寝台の姉姫を気がかりそうにうかがった。けれど、それは皇帝に遮られ、交わることはなかった。
to be...
しなやかに強く。2-4 に続く
|