相手にしてもらえなかった。
それどころか、とうとう避けられでもしているのか……彼はダフネリアの居る この場所 に寄りつきもしなくなってしまった。
「――どうかされましたか?」
「いえ」
ダフネリアは首をふって、珍しい『古書館』の利用者であるジャニス・マコレーに頭を下げた。
神学校の熱心な学生らしい彼は、神学研究のためにここに保管されている古い文献を目当てにやってきた。貸し出すことは基本的にできないため、数日ここで書写に励んでいる。
「ダフネリア殿、貴女には世話になって礼を言います」
「そんな――ただ、わたしにはよく、分からないのですけど……」
ダフネリアは、整理分の古書を抱きしめて、息をつく。
半分邪な気持ちではじめた整理の手伝いだったが、熱心な学生の研究に役立っているのをじかに感じると、やりがいのような……満たされた気持ちになる。
「マコレー様の研究に少しでも、お役に立てていたのなら嬉しく思います」
にっこりと笑って、彼に言った。
「頑張ってください」
「ありがとうございます」
お互いに笑って、手を握る。
「 ダフネリア 」
ジャニス・マコレーが『古書館』を去ったあと、ダフネリアはいつもの作業に戻っていきなりかかった声に驚いた。
背の高い書架の肩に背中をあずけた彼は、ヒヤリと冷たい亜麻色の瞳を彼女に向けて……怒っているように見える。
「アルザス兄さま……」
どうして、彼が怒っているのか分からない。
ダフネリアは驚きながら、困り果てた。
「あ、の……怒ってらっしゃる、のはどうして……ですか? 兄さま」
「どうして、だって?」
ほとほと呆れた、と彼はそのやわらかな栗色の髪と艶やかな亜麻の眼差しを険しく尖らせた。カーテン越しの日差しがあたって、木漏れ日の中にいるような錯覚を覚える。
ダフネリアは、目を細めた。
ダン!
と、そのおだやかな空気とは裏腹な乱暴な力で彼女の両手首を捕まえると、本のつまった棚の上に押しつける。頭の上の方に手首を固定されたダフネリアは、力の強さに表情をしかめ……まだ理解できなくて間近の彼を問うように見つめた。
「兄さま……」
「あれほど言ったのに、バカな子はキライだよ」
そう言って、アルザスはダフネリアの背中にある結びを解いて、その下に隠れているボタンを器用にひとつ、ひとつと外した。
前がゆるむと、奥に着たブラウスの前ボタンに手をかける。
「男と二人になるな、と言っただろう? こんな薄暗い場所で……憎らしいほど、おまえは無防備なんだから」
薄暗い、というには書架部屋〔ここ〕はまだ明るいのに……とダフネリアは思う。
「――兄さまが、来ないから二人になっただけですわ。それに、あの方は厳格な神学校の学生さまですし」
「だから、なに? 厳格な神学校の学生はこんなことをしないとでも?」
冷たく言い放って、アルザスはダフネリアのブラウスを肌蹴させると、下着の上から盛りあがった彼女の豊かな胸に触れた。
ぴくり、とふるえて……ダフネリアは、息を呑む。
「おまえは何も知らなさ過ぎる。ダフネリア――口答えは許さないよ」
「はい、兄さま」
はじまる胸への愛撫に、ダフネリアは目を閉じた。
最初、下着の上からだったそのやわやわとした波は、いつしか下着の前まで開かれて服から裸のふくらみがこぼれ出ていた。ぱさ、と床に落ちたのは彼女の着ていたスカートで……いま、ダフネリアは前のはだけたブラウスと下着だけの格好で、彼からの愛撫を受けていた。
「あ……は。……んんっ!」
強く、淡く揉まれて、胸の頂がジンジンとかたく、その存在を主張しはじめるとダフネリアの口から苦しげな甘い声が洩れた。
「たまらなく、なってきただろう? ダフネリア」
耳元で囁かれて、それだけでゾクリと背中が反る。
「あん」
「おまえの胸の先、どうなってるか分かる?」
いやいやと首を振って、「ごめんなさい」「許して」と意味も分からず許しを請うたが、アッサリと却下された。
「ダメだよ、見て」
うっすらと瞼を開けて、言われるがままに自分の胸を見ると、ダフネリアは「ああ……っ」とたまらなく仰け反った。
アルザスの指が、ツンと天を向いて過敏になった彼女の頂を強く摘みあげたのだ。
そして。
「あ、ああん」
その反対側に実った果実にもかじりつく。
ビクビクとどうしようもない感覚が背中を電気のように走って、足にまったく力が入らない。彼の栗色の髪の中に指を埋め、その頭を抱きしめる。
「あ、ああっ……兄さま!」
ゾクン、と大きく体を弓反らせて、ダフネリアは脱力した。ハアハアと荒い息を吐き、ピクンと反応する。
チュッ、と彼女のまだ敏感なままの実に彼は吸いついている。
舌で撫で上げられ、しっとりと包んで吸い上げられるとゾクゾクと肌が粟立った。
「ん……あ……」
また、燃え上がる体。
ダフネリアは、触れられてもいない……ただ、以前にいい様に慣らされただけの場所が疼くのを感じた。
(濡れてる……)
そう、気づくと力の入らない足を何とか閉じようとする。
恥ずかしかった。
(こんなの……)
「隠そうとしても、無駄だよ」
「……兄さま。イヤ!」
見ないで、とダフネリアは願った。
「 ダメ 」
太腿をのぼった、彼の指は力の入らない彼女の足を難なく開かせ、泉のしずくが垂れ落ちるほどにぬかるんだそこに下着をよけて入りこむ。
「やぁぁあっ!」
くちゅり、と鳴って、ズルズルと彼女の背中は地に滑り落ちた。
書架の下で足を開き、もたれこんだダフネリアは自由になった手で顔を覆う。
「イヤ、兄さま。見ないで……」
恥ずかしかった。
触れられもしていないのに、濡れている自分が。
早くしてほしいと待っている……なんて、知られたくなかった。彼にだけは――。
「キライにならないで……兄さま」
4, はじめての接吻〔くちづけ〕 に続く
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