さき花 〜2, ぼみ〜


〜帝国恋愛秘話〜
★この章には年齢制限がかかっています。
 3, キライにならないで に続く



 本を選びに書架の森に入ったアルザスは、そこにやってくるダフネリアを見つけた。
 持つには重い大型の文献を独楽のついた台で運んで、備えつけの梯子をつかって高い場所にも並べていく。
 アルザスの姿にようやく気がついた少女は、「あ」と手を挙げて「キャッ」とバランスを崩した。
 重い本を手に抱えていれば、やりそうなことだ――。
 盛大に降ってくる本のドサドサという音がひとしきり響いてから、少女の呻きがアルザスの耳のすぐそばで聞こえた。
 耳に触れる息遣い。
「……ッた。あ、アルザス兄さま!」
 起き上がったダフネリアは下になって受け止めてくれた彼から、飛びのいた。
 ダフネリアだけの体重ならまだよかったのだが、どさくさ紛れに雪崩のように落ちてきた本が痛かった。
「だ、大丈夫ですか……血が」
 真っ青になり、彼女は刺繍の施された白いハンカチを取り出すと、本に埋もれた彼の額に押しあてる。
 アルザスは、それを迷惑そうに押しのけて「平気だから」と立ち上がった。膝に乗っていた本が一冊、バサリと足元に落ちて……(やれやれ)と崩れた本の海と化した床を見渡した。
 辺りはまだうっすらとホコリが舞っていて、モウモウとしている。
 近くの窓を開けて、風を通すと少し空気がよくなった。
「兄さま、ごめんなさい。ありがとう」
 素直に慕ってくる彼女に、アルザスはなんとなく皮肉っぽく笑って「守るって言っただろ」とポンポンと頭を撫でてやった。
 まっすぐに見えるようで、少しクセのあるダフネリアの黒髪はやわらかい。
「はい」
 と、嬉しそうに答える彼女は嫌いではない。
(そう――キライじゃないけど)
「大好き」

「俺は好きじゃないよ」

 唇を噛んで悲しそうに我慢する彼女に、アルザスは意地悪に微笑んだ。
「おまえは、男の怖さを少しもわかっちゃいない。こんな場所で男と二人きりになっても、警戒しないなんて危なっかしくてほっとけないね」
 「え?」と顔を上げたダフネリアは、次の瞬間ビックリして声を上げることもできなかった。
 棚に押しつれられたかと思うと、アルザスの手が彼女のスカートをめくって太腿を撫でる。
 叫びだしそうになった唇を彼のもう片方の手が塞いで、彼女の耳元に囁いた。
「いいかい、よく覚えておくんだ。ダフネリア、こんな場所じゃあ叫んでも人は来ない。男の力をなめたら痛い目にあうよ」
 ホラ、と彼は言って、その腿を撫でていた指を上に滑らせて、ダフネリアの想像もつかない場所までもってきた。下着をよけて入ると、まだ硬いつぼみのように閉じたトコロに入ってくる。
「――やっ!」
 ビクリ、と身体が異物に跳ねて、ダフネリアは涙が出た。
「兄さま!!」
 痛い。
 なのに、彼女の身体は変になっていて男の指の動きにだんだん懐柔されていく。
「ぅ……うん! っあ。……はっ」
「わかる? ダフネリア」
「……ああ」
 もう、膝に力が入らなかった。棚にもたれかかって、ズルズルと滑り落ちると潤んだ目でアルザスを見る。

「おまえがどんなに心でイヤだと拒んでも、誘ってるように見える。体は足を開いて、俺の指を締めつける……見てごらん、俺の目に映る自分を――」

 まるで、言葉に操られるようにダフネリアはアルザスの亜麻色の瞳を見た。
 そこに映る自分の姿は、淫らでやらしい表情〔かお〕をしている。
 ぐちょぐちょと静かな部屋に響く、ハジメテ聞く自分の中が生み出す音もダフネリアを知らない感覚に持ち上げた。
「……ん、……あ」
「覚えておいで、イヤでも拒めない感覚。男はこういうことを平気でする……」
「……あ、ああっ!」
 いつの間にか三本の指がそれぞれに動いて、激しい抽挿をくわえた。それが、彼女の中の何かに触れて、集中的に狙われて、頭が真っ白になる。
 ビクビクとダフネリアの初心〔うぶ〕な体が震えて、こめかみを涙が一筋流れた。


*** ***


「 アルテア嬢 」

 書架部屋を這う、しわがれた学者の声に瞼を開ける。
 ハアハア、と乱れた息を繰り返すダフネリアは、腿の上までめくれたスカートを手で何とかととのえたが……まだ、動くことはできなかった。
 代わりに立ったのはアルザスで、濡れた指だけをハンカチで拭うと書架棚の森を抜けて、学者を呼んだ。
「ダーモー卿、彼女なら奥ですよ」
「トラドゥーラ殿……そうか。では、お嬢さんにこれも渡しといてくれんかの」
「いいですよ」
 アルザスが快く請け負うと、ドサリ、と運んできた整理分の本を残して、年老いた学者は出ていった。
「学問バカも 問題 だな」
 と、アルザスは自分の所業はさて置いて、呆れた。

「兄さま……」

 背後から頼りない声がかかって、アルザスは(嫌われたかな)と思った。
 あんなことをされれば、百年の恋も冷める。深窓の令嬢なら、 当然 だ。
 それが、半ば目的だったとは言え……ずっと慕ってくれた少女から嫌われるというのは、あまりいい気分のモノではなかった。
 キュッ、と背中から彼女が抱きついてきて、柄にもなく戸惑った。
「兄さま、ずるい……」
「は?」
 若いが、豊かにふくらんだダフネリアの胸が二つ、背中にあたる。
「わたしは兄さま以外の男の人と、二人になんてなりません。だから――」

 イヤ、なんかじゃなかった。
 怖かったけど……恥ずかしいほど乱れたのは、彼が好きだったからだ。

「だから……怖い男の人を兄さまが全部、教えてくださればいいのに」
 抱きつきながら、ダフネリアの足は期待と恐怖にふるえていた。


 3, キライにならないで に続く

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