「 聞いてる? 」
〜 夢 〜
いきなり電話をかけてきた貴水に臨月間近のなつきは訊いた。
それと言うのも、かけてきたクセに何を話すというワケでもなく、黙ってなつきの話を聞いているだけだったからだ。
『うん』
と、頷くだけじゃ本当なのか、疑わしい。
「もう! 本当、なんなのよっ」
『うん』
(だーかーらー! その相槌はなんだっていうのよっ、バカ!!)
『なつきさん』
「なによっ!! バカっ」
『……もうすぐ、ツアーが終わるから』
やけに静かな彼の声に、なつきは「ふーん、そう?」と嬉しいくせに強がってみせる。
そんな電話の向こうで彼は真剣に言った。
『そしたら、帰るよ』と。
(ホントにもう、なんなのよ……)
「 待ってる 」
今、お腹を蹴った この子 と一緒に待ってるから――。
大きくなったお腹を撫でて、なつきはごく自然に笑みを浮かべた。
fin.
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