カーテンの向こうから、朝の日差しが射しこんで……鳴海広之〔なるみ ひろゆき〕の瞼をそっと叩いた。
「……ん」
目を開ければ、そこは自分の部屋のベッドの中で、腕の中には結局 昨日の夜には 帰ることができなかった隣の家の女の子である山辺志穂〔やまべ しほ〕がすやすやと眠っている。
腰が砕けて立つこともままならない彼女は、帰ることを早々に諦めて、らしくない嘘を電話でついていた。
『うん、そう。祥子ちゃんの家に泊まることに……ごめんなさい。うん、うん、迷惑にならないようにするから……』
友人の澤嶺祥子〔さわみね しょうこ〕にアリバイをお願いしたらしい志穂は、一生懸命そんなことを電話越しの母親に説明していた。
「……まあ。あのあとは別に大したことはしてないし」
と。
広之はぼんやりと考える。
大体、「何か」を続けて「できる」ような状況でもなかった。十分過ぎるくらいその前に回数をこなしたがために欲望はほぼ吐き出しきっていたし、彼女の体も動くまでに相当の時間がかかった。
したことと言えば、動けない彼女をお姫さま抱っこで二階の広之の部屋のベッドに運んで、「おやすみのキス」をして、一緒に眠ったくらいだろうか。
眠る前に ちょっとした 悪戯はしたけれど――。
〜 その後 〜
(ああ、俺って朝から元気だよな……)
無防備な寝顔の、やわらかな頬にキスをして苦笑する。
泊まる予定のなかった彼女の服はメイド服のままだった。
制服がシワだらけになるよりも、こちらの方が誤魔化しがきくからと彼女は困ったように説明したが……はっきり言って、広之からすれば朝から煽られている気分だ。
漆黒の曲がったリボンをほどいて、ブラウスのボタンを外していく。
ふっくらとした胸の谷間が覗いて、ピンクのブラがチラリと見えた。
すでに、いくつかの花びらがそこには咲いているけれど……すべらかなその肌のふくらみに唇を添えて、また一つ痕〔しるし〕を残すために強く吸いつく。
「ぅん……いた、ぃ」
志穂が身じろいで、手を動かしたかと思うと 自分のものではない 髪に指先が触れでもしたのか ピタリ と硬直する。
「な、なるみ……くん?」
まだ、夢の中のようなぼんやりとした彼女の目が、ビックリしたように開かれて 彼 を映した。
「なに、してるの?」
「 おはよう 」
戸惑いの問いには答えずに広之はくすりと微笑んで、清清しい朝の挨拶を 彼女 に向けて投げた。
*** ***
「おは、おはっ?!」
広之が投げたボールは 予想通り 彼女の思考の迷宮にポトリと落ちる。
「えぇ?……あ、あの。ふきゃ、んんっ」
状況把握もできないままの志穂の体を布団に張りつけて、唇を重ねる。朝からの 濃厚な それに目を白黒とさせて、瞼を閉じることも忘れたような志穂は広之をじっと見た。
ひどくあどけなくて、頼りない眼差し。
彼に見惚れるかのようにうっとりと瞬くから、つい口にした。
「言っとくけど、コレ、夢じゃないからね」
すると、彼女は真っ赤に熟れて反論した。
「わ、わかってるもん!」
「どうだか……」
頬を恥ずかしそうに染めて「慌てて」抗弁するあたり、かなり怪しい。
半分本気で広之は嘆息した。冗談のつもりだったが、志穂には「前科」があるから……少し、目を覚まさせる必要はあるかもしれない。
「な、鳴海くん……」
泣きそうな顔で彼を仰ぐ彼女の顔は熟れたリンゴ「そのもの」だった。
「なに?」
そ知らぬ顔で広之は志穂を見下ろして、朝の元気な下半身をさらに彼女の可愛い太腿へと押しつけた。
彼女の膝を割って、大きく開かせるとメイド服のスカートの下から素の太腿と小さくて薄い白い下着が朝日の中に晒される。
「やっ……ダメ」
志穂は首を振って抵抗した。
薄い布越しに擦りつけられるそれに、これ以上ないほどに熱を帯びて反応を示しながら「ダメダメ」と何度も大きく頭〔かぶり〕を振る。
「どうして? 志穂の ココ は こんなに 淫乱なのに」
と、広之が指を潤んだ中心に滑らせようとするのを彼女の手が必死に止めて、「だって」と震える声で訴える。
「そ、そんなことしたら……また、家に帰れなくなっちゃうもん。昨日みたいに……そんなの 無理 だもん」
わかってるクセに、と志穂は彼をキッと潤んだ目で睨んで、眉間に悩ましげなシワを刻んだ。
「ふっ、ア……やぁッ」
悶える熱い息とともに、耐えるような喘ぎ声を紡ぐ。
(だよな……)
ハァ、と息をついて広之は心の中で同意した。
今日の昼には、両親が戻ってくる。それでなくても、二日続けて 外泊 なんてことが学生の身分で許されるワケもないし。――けれど、もうしばらくは朝の遊戯を楽しもうと腰をゆっくりと煽るように動かした。
パコン、と教科書を丸めたそれで志穂の頭を軽く叩〔はた〕くと、広之は呆れたとばかりに言った。
「おまえ、馬鹿だろ?」
「……そ、そんなこと……ないもん」
うう、と呻いて自信なさげに上目遣いをすると、志穂は叩かれた頭を撫でる。
「に、苦手なだけだもん」
「確かにな。国語と社会はまあまあだけど……英語と数学が致命的。まあ、数学は捨ててもいいとして……英語はもう少し出来ないと ツライ ぞ」
「……はい」
神妙に頷いて、志穂は項垂〔うなだ〕れた。
受験まであと、少し。
下向きな 彼女 は、落ちこむ時間もなく……シッカリ者の 彼 にみっちりと 心身ともに 教えこまれる毎日を過ごしている。
>>>おわり。
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