焼けと机と室と。 F★K大作戦!2


〜NAO's blog〜
 ■小槙さんと輝晃くんの、過去話+中学三年・初夏■
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 たかが、キス。されど、キス――だ。

 冗談半分で小槙が彼らにキスされたとなれば、報復するつもりだった。しかし、自分はそれでよくても された 小槙はどうなるのか。
 泣く彼女を想像して、苦しくなる。

「小槙……」

「な、なんなん?」
 雑木林の鬱蒼とした影で、小槙の少し上ずった声が訊いた。
 ザッと枯葉が踏みしめられる音が響いて、上空で強い風が吹いた。
「 仁道 」
 声をかけた輝晃に、三人とその向こうにかたく強張った小槙の顔が映った。
「馳くん」
 緊張を解く小槙の手が、三宅によって握られてるのを見て、輝晃は表情を険しくした。
「友だちが探してたで?」
 それとなく、彼女の手を引っ張って「悪がきトリオ」から引き剥がすと、間に入る。
「う、うん。でも、落し物したっていうて……三宅くんが」
「わかった。俺が代わりに手貸しとくからもどっとき」
 小槙は輝晃を仰いで、それでも身の危険を感じていたのか頷いた。
「う、うん。じゃあ、ありがとう」



〜 F★K大作戦!2 〜


 小槙がその場を足早に去ったあと、輝晃は三人と向かい合って訊いた。
「で、落し物ってなんや?」
 ニヤニヤと笑う彼らは、「さぁ? なんやったかな?」としらばっくれて横切った。
 輝晃の肩を叩いて、
「ご苦労さんやな」
 と、おかしそうに労った。



 お楽しみのところ悪いとは思ったが、輝晃はこれ以上、彼らのお遊びに小槙を付き合わせるつもりはなかった。
 その夜、「悪がきトリオ」はある女子部屋に夜這いに行って大騒ぎを起こし、こってり先生たちから説教をくらって強制送還された。
(いったい、何をしたんだか)
 輝晃は呆れて、ただ部屋番号と「遊びに来てね」と書かれただけだったその紙を脳裏から消し去った。  


*** ***


 それから、「悪がきトリオ」の三人は先生からの監視も強くなって、女子からの風当たりも悪くなったために小槙に絡むことは少なくなった。
 まあ、時々、輝晃には言いがかりをつけてきてはいたけれど……小槙にいかないなら問題はない。
 ――まったく。
「あっ、懐かしい光景やね。仁道さんに絡む「悪がきトリオ」」
「ホンマや、あっ! 困ってる困ってる」
 ご親切にも解説をする彼女たちに、輝晃は嫌になった。
 気にすれば、三人はつけ上がる……と思って極力目を向けないようにしてみたのだが。
(どうも、逆効果みたいやな)
 と、思いはじめたころ。
「髪触られてるわ、相変わらず無防備やねえ。彼女」
「ホンマ、あれやったら、キスされても怒られへん」

「うるさいわ」

 輝晃の呟きに、「え?」と彼女たちが怯んだ。
「いやや、怒ったん?」
「べ、べつに悪口言ってたワケやないよ? なあ」
 うんうんと頷きあう彼女たちに、にっこりと笑って否定した。
「怒ってへん。ハラが立ってるだけや――自分にな」
 (これじゃあ、中学の頃と同じやないか)と自嘲して、足を向けた途端に彼女に抱きつく三宅を見て、思いっきり蹴り飛ばした。

「つーか! 三宅くんが悪ノリしすぎやねんっ」

 泣きそうな、小槙の顔。
(ごめん、小槙)

「 仁道 」

 呼んで、戸惑う彼女の手を取った。

「 送る 」

 強い力で引っ張り出して、会場をあとにした。



 市内のホテルのベッドの上でキスをした小槙は、顔をそむけて目を合わせなかった。
 身体は、アッという間に熱くなって敏感に反応した。
 キス、だけで。

「小槙、どうしたん?」

 訊くと、恥ずかしそうに身をよじって「だって」と抵抗する。
 黒髪をシーツに広げ、生まれたまんまの姿を横たえた小槙は熱っぽい目を潤ませて輝晃をとらえた。
 立てた膝を左右に開いて、茂みを掻きわけ彼女の中心に触れると十分に泉は潤っていて彼を受け入れようと待っていた。
 指を差しこんで、感動する。
(感じてるとは、思うてたけど……今日は格別やな)
 しかし、特に何をした記憶もない。
 特別なシチュエーションも、体位でもないハズだ。
 まさか、三宅に触られたから――なんてことはあるワケがないし。
「小槙の ココ すごいやらしいんやけど、俺、なんかした?」
「あ……、やっ」
 準備を終えて、ゆっくりと入ると睨んでくる。

「もっと激しくしてほしい?」

 意地悪に訊いてみると、ギュッと抱きついてくる。
「輝くん」
(反則や、小槙)
「あっ」
 と、小槙の息が突き上げるたびに甘く耳にかかった。
「なあ、輝くん……わたしに……キスしたって、ホンマ?」
「え?」
 求め合いながら、顔を見合わせる。
 時々、苦しげに眉根を寄せて小槙は恥ずかしそうに躊躇った。
「聞いてん……『ロミオとジュリエット』の時……なあ、したん?」
「うん、シタ」
 その返事にふたたび輝晃の肩に顎を乗せて密着する。
 胸の形が分かるほど近くに来て、背中から項〔うなじ〕に廻された彼女の指が彼の髪をもてあそんだ。
「ふーん」
「なに、嫌やった? 黙ってしたから怒ってるん?」
「……そりゃあ、嫌やわ。ハジメテやったのに――でも、もうええ」
 最後の高みにのぼりはじめた小槙は腰を揺らしながら、息を乱した。
「あっ、あん……いい。輝晃くんやったら、いいねん」

( だから、ソレ、反則やて )

 小槙の達する間際の喘ぎに、きつく収縮する彼女の中で最後の突き上げを放って輝晃は苦笑した。


 >>>おわり。


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