焼けと机と室と。 F★K大作戦!1


〜NAO's blog〜
 ■小槙さんと輝晃くんの、過去話+中学三年・初夏■
 F★K大作戦!1 ・・・> F★K大作戦!2



「 アイツら…… 」
 同窓会の会場である大阪・梅田の飲み屋に入った馳輝晃〔はせ てるあき〕は、キャーキャーと集まる女の子の向こうで「悪がきトリオ」に絡まれる仁道小槙〔にどう こまき〕を見つけた。
 輝晃はすぐに、 コレ が彼らの悪ふざけだと分かった。

 悪がきトリオ――。
 田村雄也〔たむら ゆうや〕、氷室圭太郎〔ひむろ けいたろう〕、そして三宅大地〔みやけ だいち〕。

 いつだって、 アイツら はそうだった。
 輝晃が小槙を好きだと気づいた時から、まるで見せつけるように小槙につきまとって、気安く触って面白がる。
(小槙は気づいてへんかったとは思うけど……)
 アレは、輝晃への 嫌がらせ なのだ。たぶん……何をしたのかは心当たりがないが、彼らの好きな子が輝晃を好きだったとか、それを理由に断られたとかの類だろうと思う。

 一番の 悪ふざけ はあの時、――三年の修学旅行の時だった。



〜 F★K大作戦!1 〜


「 仁道小槙のファースト・キスで、どうや? 」

 修学旅行の直前レクレーションで体育館に集まった時のことだった。聞こえよがしに言い放つ趣味の悪い賭け事に、輝晃は眉根を寄せた。
(なんやて?)
 かえりみれば、「悪がきトリオ」が輝晃が見るのを分かっていたようにニヤニヤと笑う。
「決まり、やな」
「そうやな……面白そうや」
「委員長なら、絶対ハジメテやろうしガードもかたそうや。一番最初に奪ったら勝ちってコトで――」
 三人は輝晃の目を挑戦的に見て、言った。

「 期限は、修学旅行中 」

 と。



 冗談じゃなかった。
(仁道を賭けの対象にするやなんて、どうかしてる)
 真面目な小槙は男子と喋るのだって必要最低限の、大人しい少女だ。
 もちろん、中学三年の今まで浮いた噂もなければ、誰かと付き合ったという話もない……それが、輝晃にとっては嬉しくもあり、逆にきっかけを失ってしまう原因でもあった。
 そんな彼女の唇を――「悪がきトリオ」は輝晃を挑発するためだけに狙うという。
 狙うだけならいい。
 ガードの堅い彼女のことだから、そう易々と彼らも近づくことはできないだろう。しかし、無自覚な彼女はある点においてはとても無防備だ。
 そういう知識がない、と思わせるほど無垢で純真なトコロがある。
 嘘をついても疑わない、困っていれば助けなければと簡単に手を貸そうとする。
 それが、小槙のいいトコロであり、輝晃がヤキモキするトコロだった。
 最初の見学場所で、早速氷室圭太郎が小槙に接近していた。
 「修学旅行のしおり」を広げて話しているところを見ると、今後のスケジュールでも確認するふりをしているのかもしれない。
 ジッ、と眺めていたら、急に手を取られた。
「テルー、一緒に見学してええ?」
 集団でやってきた彼女たちは有無を言わせずに取り囲み、立ち止まる彼を促すように引っ張る。
「いや、俺は――」
 小槙が心配だった。
 チラリ、と彼女を見ると今度は田村雄也も加わって、何事かを説明している。
(そろそろ牽制しておいたほうがいいか――)
 と、思いはじめたころ、先生がやってきて彼女を救ってくれた。
 ホッとする。

「輝くん、聞いてる? もう行かな時間あらへんよ。仁道さんは忙しそうやし……早く回ってしまわんと」

「そうやな」
 氷室と田村が彼女から離れたことで、とりあえず歩き出す。
 ゾロゾロ、と歩いてくる彼女たちに……ふと、訊いた。
「俺が仁道見てるって、なんで分かったんや?」
「 バレバレや 」
 呆れたように、言われた。
 ふーん、と相槌を打ちつつ、じゃあなんで本人には気づいてもらえないのだろう……と不思議に思った。



 そして、その日最後の見学場所での自由時間のこと。
「あんな、これ――待ってるから」
 キャー、と顔を赤くして渡された紙に、輝晃は困惑した。
 それは、部屋番の書かれた「招待状」だった。
 夜、就寝時間が過ぎてからのお誘いはもちろん、異性の部屋に入ることは原則禁止されている。
「悪いけど」
 行けない、と返そうと思ったら、後ろから声をかけられた。
「馳くん!」
「はい?」
 ふり返ると立っていたのは、息を切らせた小槙の親友だった。
 ほかにも何人か、同じグループのメンバーが走ってきてハアハアと息を切らせている。
「どうしたんや? 一体」
「う、うん。あんな……小槙ちゃん知らん?」
「いや……見てへんけど」
 答えて、すぐに嫌な予感がした。
 むしろ、確信と言ったほうがいいかもしれない。
「ああっ、そうなん。どうしよ……さっき「悪がきトリオ」の三宅くんと話してたとは思っててんけど。まさか――なんかされてへんかと思うて」
「どこで?」
「あっち、厠〔かわや〕の横の階段のところ」
 佐藤カナコ〔さとう かなこ〕が指差した方向へ駆け出して、「くそったれ!」と自分自身を罵〔ののし〕った。


 >>>つづきます。


 F★K大作戦!1 ・・・> F★K大作戦!2

BACK