0‐0.ジョーカー! (日誌掲載日:2003,11,30)
『 パパ! 』
耳に響く、少女の声に黒髪・黒の瞳の地球籍アジアン系の男は髭面を顰〔しか〕めた。
理由?
そんなものは、決まっている。
『J〔ジェイ〕! 何度言ったら分かるんだ? K〔キング〕と呼べと言っているだろうっ』
一気に年を食った気になるじゃねえか?
『 K! 』
苛立たしげな少女の声。
『今、そんなこと言ってる場合?! 早くして!!』
「へっ! 言われなくても」
にやり、と笑ってKは呟いた。
それは、小型の無線で繋がっている彼の娘には届かないほどの声。
Kの細く束ねた長い髪が、強い風に靡〔なび〕いた。
それは、夜のビルの上。
しかも、ただのビルではなく……真っ暗な闇の中をサーチライトと銃口が彼を追っていた。
シューアルト星、惑星本部。
「サー、あと0.01です」
銀の翼竜が告げると同時に飛翔する。
と、同時にKもビルから飛び降りた。
滑降する彼の鈍色をしたコートが、バタバタと派手な音を立てる。
その先にあるもの――それは。
目を眇〔すが〕めて、照準を合わせる。
『J! Q! ついてこい』
『りょーかいっ!』
「ラジャー、サー」
悲鳴のような声と機械的に静かな声が重なった。
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