…こんにちは。
仲町文乃と申します。
はい…かの有名な、極悪生徒会長のイケニエでござぁますよ。
奴の支配下に陥れられ、早数ヶ月…。
なんだか…。
『生徒会長・鬼頭恭介の彼女』が定着しつつあるんですけどっ!?
…こんな新年、やだ…。…
「あ、間違い発見」
「へ!?」
「さぁ、どこだろうね」
「お、教えてくれたりしちゃったりしません?」
「まともな日本語喋ろうよ…」
「…どこが間違っていますか?」
「半分くらい」
「へ!?それって、”発見”どころじゃない…」
「頑張れ、ふみ」
「…ほくそ笑むなっ」
「暖かく見守ってるんだよ」
「嘘付け…」
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?
え?
文乃ですか?
…いちいち聞かないで下さいよ。
見れば分かるじゃないですかぁ…。
ぁぁぁ…。
え?
今?
…冬休みです。
もうお正月です…。
「ふみ、宿題はさっさと終わらせるものだって」
「…それは、天才のセリフです」
「ふみは馬鹿だから、面倒だろ?」
「…どうせ馬鹿です」
「俺は天才だから、簡単すぎて面倒なんだよね」
「…つまり?」
「さっさと終わらせた方がいいのは、お互い様」
「…そうですか」
「そうですよ」
「…ところで、鬼頭氏」
「…」
「…恭くん」
「なに?」
「なんで、文乃は鬼頭マンションで年越しなのですか!?」
「俺が決めたから」
ドン。
撃沈です。
お母さん。
お父さん。
文乃は、悪い人に連れ去られました…。
ごめんなさい、愚かな娘です。
「でも、最終的に悪いのは、文乃の親でしょ」
「…どうせ、阿呆な親たちだもん」
「娘に”帰省するな”だからねぇ」
「…万年青春夫婦ですから」
「”文乃も大きくなったし、夫婦水入らずで過ごしたいわ”」
「…マネするでない…!」
「似てただろ」
「…ぁい」
そうなんですよ…みなさん。
悪いのは、うちの親どもなのですって!
以下、昨日の仲町親子の電話会話。
「明日の夕方の電車で帰るつもりなんだけど」
「…え?文乃、帰って来るの!?」
「なんで!?帰っちゃダメ!?」
「高校生なんて、夜遊びしなさいよ!」
「は!?」
「せっかく規制ユルユルの寮にいるのよ!?」
「はぁ…」
「高校生らしく、羽目外しなさいな」
「…母?」
「だから、ママとパパの邪魔しないでねっ」
「は?」
「雪乃もお友達の家だから」
「…」
「文乃、帰って来ちゃダメよ」
以上、親子の会話です…。
どこの世の中に、娘の夜遊びを推奨する親がいるの!?
もう…やだ。
お母さん!
お父さん!
ついでに、妹!
あなたたちのおかげで…。
文乃はっ。
文乃は…っ!!
ケダモノの餌食になっちゃったじゃないの!!
「ふみ?ふーみ?」
「はっ!」
「脳内トリップ終わった?」
「…ただいま」
こうして、文乃は新年を鬼頭マンションで迎えたのですよ…。
え?
カウントダウンしたかって?
…。
ベッドの中でね!
それ以上は、聞いちゃだめっ。
「初詣、行くか?」
「神社?」
「寺に詣でるわけ?仲町家は」
「違う!」
「だったら、神社」
「…」
「行く?」
「行かない」
「なんで?」
「…後でこっそり独りで行くもん」
「それはまた、どうして?」
「…いろいろナイショにしたいの!」
「文乃?」
「…ぅ」
悪魔が笑ってる…。
にたにた笑ってます!
あぁぁぁ。
新たな悪魔イヤーの幕開けです…。
「文乃?」
「…ぁう」
「俺に隠し事してもいいと思ってるの?」
「…たぶん思ってたりします」
「たぶん?」
「一応…」
「文乃」
「…はい」
「俺に隠し事したら、いけません」
…こいつなら…。
嘘ついたら針千本飲〜ます
って、普通に言いそうですよ!
いやいや。
至極当然に、実行しそうです。
「…ぅはい」
「よろしい」
いいもん。
いいもーん。
こっそり。
『悪霊退散』って祈っておくから。
厄除けのお守り買おう。
今年の文乃は、目指せ平和な1年!
これが目標なのです…!
去年は、この鬼悪魔に…あんなことや、こんなこと!
それはもぉ、筆舌尽くしがたい悪行に遭い…!!
何度、神様を呪ったことか!
「ふみ?」
「なんでもないですーーーー」
「ふみ。ご飯作って」
「…自分で作れ!」
「やだ」
「やだって…」
「やだ。作れ」
「自分で作れ」
「ふみが作れ」
「…私、お客さんだもん!」
「でも俺の下僕でしょ」
「ちっがーう!」
「じゃあ、恋人」
「それも違うもん!」
「そう?」
「うん!」
「じゃあ、恋人にしてあげよう」
「へ…?」
…あの…みなさん。
どうやら、地獄への扉が開いた模様です…。
地獄には何があるのか、ご存知ですか…?
寝室という名の地獄には、ベッドがあるんですよっ。
「いーやーーーーだーーー」
「はいはい」
「変態!痴漢!不審者!」
「文乃は馬鹿で可愛いなぁ」
「馬鹿って言うな!」
「じゃあ、阿呆」
「…一緒じゃん!」
「はいはい」
悪魔が!
大魔王が!
ルシフェル!!
サタン!
鬼!
極悪人!
思いつく限り叫んでみました。
でも。
新年早々、文乃は学習してしまいました。
悪口言ったら、その分、お仕置きされるんですぅっ!!
「ふみ、姫始めって知ってる?」
「はい?」
「ひめはじめ」
「…?」
「わからない?」
「お姫様ごっこ?」
「ふみがお姫様ごっこしたいなら、してあげるけど?」
「…そんな申し出いらんですたぃ」
「残念。あ〜れ〜ってやりたかったのに」
「やらない!」
「じゃあ、姫始めしようか」
「な、なぜに脱がす!?」
「姫始めだから」
「なに、それ!?」
15分後。
身を持って知りました…。
そういえば、24時間くらい前に。
”姫納めってことで”
と言われて、手篭めにされた気がします…。
今年、2つ目の学習でした…。
文乃の”良いお年”は、いつ来るのでしょう??
fin.
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