Moonlight Piano #28-wc


〜その後、クリスマスピアノ・貴水視点〜
■「クリスマス」企画小説の貴水視点です■
こちらの 「#28-wc」 は、「クリスマス企画」の企画小説だった
「アヴェマリア」の貴水視点。
「うぇぶ拍手」に置いていたSSです。
その後の二人の恋人同士らしい会話をどうぞ♪



 理事長が控え室から、出ていくのを千住貴水は目の端で確認した――。



 浅く寄せた唇を離して、間近でなつきと目を合わせる。
 久方ぶりに会った彼女は、変わらずまっすぐに自分を映して……久方ぶりに顔を合わせたにもかかわらず、顔を見るよりもまずキスをしてしまったことに、思わず笑ってしまった。



〜 アヴェマリア 〜


「なに?」
 なつきは、そんな貴水の様子に身を強張らせた。
「なんでもない、ちょっとおかしかっただけだよ……僕がね」
「……なによ、それ」
 不服そうに身をよじる彼女の体を制して、貴水はくすりと唇で弧を描く。
「小夜原さん、来てくれて嬉しいんだ。本当に」
「……うん。わたしも――会いたかった」
 ぎゅっと抱きついたなつきの体をしっかりととらえて、貴水は彼女の耳の裏に唇を寄せる。
 身じろぐと、なつきは「ねえ?」と彼の首筋に唇を寄せて訊いてきた。

「あの「アヴェマリア」……わたしのために弾いてくれたのって、ホント?」

 うん、と頷いて貴水はなつきの頬を撫でて、顔を傾けた。
「足りないんだったら、もう一回弾くけど?」
 唇を寄せて言うと、ゆるんだ彼女の唇に深く口づける。
「千住くん?」
 戸惑ったような眼差しに、微笑む化け物じみた自分の顔が映る。
「もちろん、タダじゃないけどね――」
 口にして、なんて卑怯な言い草だろうと貴水は自嘲した。

「あ、そうだ。まだ、言ってなかったよね?」

「え?」
 キスの合間に訊くと、なつきはぼんやりと「なんのはなし?」と首を誘うように傾ける。
 啄〔つい〕ばむように口づけて、ゆっくりと微笑んだ。



「 メリー・クリスマス 」


fin.

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