盗のお仕事。2-5。「だしい答えの出し方」5 -wc


〜甘品高校シリーズ2〜
■拍手ページから落ちてきました■
こちらの 「ただしい答えの出し方。5-wc」 は、
「手のひらに、Oパーツ。」の「うぇぶ拍手」用に書いた
オマケ番外SS/加筆修正版です。
「ただしい答えの出し方。5」の裏側、超常研の部室で二人きりの
西野センパイと伶さんは……際どい場面を伶さん視点でどうぞ。



「伶、どう?」
 ぺろり、と耳たぶを舐められてビックリした。
 一体、いきなり何をするのよ。コイツは。
 いつもの行き過ぎたスキンシップにしても、ちょっと困る。
「どうって? ちょっと耳なめないでよ、西野?」
 なんて、わたしの異議申し立てにも、今日の西野は従うつもりがないらしい。
 背後から強く押されて、パイプ椅子と簡易机がぶつかり合った。
 ガタガタとけたたましい音を立てるから、想像以上に事態が いつも とは違っていることに気づく。
(……って、何よ。この体勢は?)
 机の上に背中をつけて、足は床を離れていた。
 ジタバタしても、たぶん間に入った西野には効果が期待できそうにない。
 そうね、スカートがめくれ上がることくらいはあるかもしれないけど……。

「遥くんも彼女ができたんだし、そろそろ考えてくれてもいいと思うんだよね」

 わたしが身動きもせずに状況把握をしていると、西野がいつものごとく理解不能なことを耳元で囁いた。
 眉を寄せて、訊いてみる。
「遥? 考えるって何の話よ」
 確かに、遥は奈菜ちゃんに夢中だし、奈菜ちゃんも憎からず弟を想っているようだ。
 付き合うのは、きっと時間の問題だとは思う――思うけど。
 でも、だから何なの?
 西野は、なんとなくわたしがこう言うだろうことを予想していたように笑った。
「んー、とりあえずココから?」
 言葉を途切れさせて、あとはどっしりと体重を乗せてくる。
(重い!)
 唇が合って、それが長くてわたしは喘いだ。
「……んー、はっ」
 息を吸うために開けた唇から、歯列を割って舌が入ってくる。
 誰のって、西野のモノに決まってるんだけど、にわかには信じられなかった。
 ぴったりと合わさる胸。
 で、ビックリなことに彼の手が動いたのは、もっと別のトコロ。
 ココでは、明言するのを控えさせてもらうけど……とにかく、もっと信じられないトコロを触ったのよ。
「ちょ……何?」
 わたしが抗うより、西野の方が顔を曇らせていた。
「やっぱり、ダメか。まだ……そりゃ、そうだろうけど」
「一体、何の話よ?」
 よく分からない自己完結をする西野にわたしは、仏頂面をして睨む。
 でも、やっぱり彼の目に映るわたしはあんまり表情がなかった。
 胸にのしかかる体重が減って、ホッと一息をつくと西野の手が開いたブレザーの下にある薄地のブラウス上から胸をまさぐってきた。
「ふにょふにょだもんなー、ココもココも。ちぇっ」
 やけにつまんなさそうに口にするから、ムッとする。
 これだけ他人の胸を弄〔いじ〕っておきながら、不満を口にするって、どうなのよ?
 触るどころか、形が変わるくらい掴んでるし、揉んでるし、上にひっぱったりもしてるじゃない!!
(……ちょっと、触りすぎだってばっ。痛いんだから、やめてよ!)

「 理解不能 」

 ゆるく頭を振って、ため息を吐〔つ〕く。西野を押しのけて机から下りると、乱れた服装と髪を整えた。
 髪を梳〔す〕きながら、静かに告げる。
「西野、今日から一ヶ月、1m以内に近づくの 禁止 だから」
「え? なんで」
「とにかく、 禁止
 ビシッ、と物差しを手にして、西野を止めるとツーンとそっぽを向く。
 この物差しは、何故か部室〔ココ〕にあったのよ。どうしてかしら??
「一ヶ月は長いだろー? せめて一週間とかで勘弁してよ」
「ダーメ!」
 にっこりと笑うヤツの甘い譲歩申請を、わたしは無下に却下した。

「 一ヶ月、 わたし に近づかないでね。西野 」

 その時。
 わたしの背後で、よく知る女の子の声が聞こえた。
 去っていく足音と外の気配に……「奈菜ちゃん?」と首を傾げてふり返る。
 そこにあるのは、閉ざされたままの 扉 だけ。



「――姉貴」

 と、座りこんだ遥が次の仕事の図面と日取りを持ったまま、ジッと見上げてくる。
 その瞳は、何故かわたしの周辺をウロウロしていて落ち着きがない。
「何?」
「センパイは?」
「西野? さあ、なんか落ちこんでて役に立たなかったから置いてきたわ」
「ふーん」
 わたしの答えに、遥が少し憐れむような顔をした。

 
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