焼けと机と室と。 Darkness eye


〜NAO's blog〜
 ■小槙さんと輝晃くんの、過去話+高校一年・春■



 唇に触れると、彼女は驚いたように目を見開いて「馳くん」と呼んだ。
 セーラー服の上の裾から中に入ってひんやりとした腹部に触れて、馳輝晃〔はせ てるあき〕は息を呑んで身をかたくする仁道小槙〔にどう こまき〕の唇にさらに深く口づけ……戸惑う彼女の中に舌を入れた。
 抗う手は握り締められて、弱々しく震えている。
「はっ……あ、ん……ぅん……いやぁっ」
 頬を涙が流れて、濡れた瞳が黒ブチの眼鏡の向こうから責めるように輝晃を見つめる。
 邪魔な眼鏡〔それ〕を奪って、輝晃はさらに彼女を陵辱した。
 下着の上から胸のふくらみに触れ、その感触をやわらかいと思う。
「……ぅん!」
 早々に下着を退けて直接指で丁寧に揉むと、やわらかな肌とは違う場所に指先があたって摘みあげた。
 小槙の背中がびくんと跳ねて、身をよじる。
 感覚から逃れるように顔を背けて、かたく目をつぶる。
 また、涙が彼女の瞳からこぼれて、今度はこめかみを流れていく。
 そこに唇を落として、輝晃はさらに事態〔こと〕を進めた。

 彼女の理性を失わせるところ。
 彼女の いい場所 を探して、責め、すべてを自由にしたかった。
 誰も、まだ触れていない彼女の場所……触れるのは、絶対に自分だけであってほしいのだ。
 だから。



〜 Darkness eye 〜


(だから、こうするんや。いや、ちがうな――)
 輝晃はぴくりと反応する小槙の身体に集中しながら、彼女の耳に唇をあてて吐息をかける。
 首筋にゆっくりと下りて、鎖骨に触れ、舌を這わせた。
 あ、とため息のような彼女のハジメテ聞く甘い声にゾクリと心が粟立った。
(ただ、したい。俺がこうしたいだけなんや……だって、仁道は可愛いから)
 犯したいほど。
 下唇を噛んで耐える彼女の悲痛な表情にさえ、気持ちは昂ぶった。
「 仁道 」
 名前を呼んでも、今の彼女には聞こえていないようだった。
 ただ、我慢している。終わるまで。
 何が? とは、おそらく想像できていないだろうが。
 セーラー服を下着と一緒にたくし上げたところに、露な胸の双丘が顔を出していた。愛撫のためか、かたく結びつきかけたキレイな天辺の実は輝晃の方を向いていて、初々しく誘っていた。
「あ……」
 ふぅん、と苦しい息をついて、小槙は刺激に耐えていた。小さく震えながら、ハジメテそれを口に含まれる快楽に呑みこまれまいと感覚を閉ざす気配がする。
 させるものか、と思う。
 舌で実のまわりを撫で、甘く吸い、歯でかじる。
 ビリビリ、と電気が走ったような震えが彼女を支配し、「いやぁっ!」と泣き叫ぶ。
「あっはあっ」
 口ではできない片方は、指先で苛めぬいて力の入らなくなった彼女の足に触れた。
 規定どおりの膝上スカートは、今までの作業の間に太腿の半ばまで上がっていた。思うように動かないらしい膝頭を持ち上げて、撫であげる。
 最後の秘境は、一枚の布に隠されていた。布の上から確かめると、わずかに湿り気を帯びている。
「いややっ、やめて」
 首を振っているのだろう小槙の懇願も、一枚のピンクのカエルの下着では防ぎようもなかった。

『 馳くん、やめて 』

 静かな彼女の声に輝晃はドキリとして、ハッとする。
 目を開けると、そこは自分の部屋で――思いっきり 朝 だった。
「………」
 上半身を持ち上げて、気持ち悪く汗をかいた体にウンザリする。
「情けねー」
 積極的に声をかけないようにしてから、頻繁に見るようになった夢は欲求不満も甚だしい内容のモノばかりだった。その中でも、今日のは酷い。

(最悪や……彼女を汚すやなんて)

 もちろん、そういう欲求が 全然 ないとは言わないが……それでも、以前は自制ができていたのだ。これでも。
 なのに、最近はと言うと、無理矢理キスはごくごく普通で、裸にしたり、欲求をぶつければ限度を知らない妄想のアレやコレやに悩まされている。
 妄想の暴走。
 はぁ、と息をついて輝晃はベッドから足を下ろした。
(まさか、蓄積されとるんやろか? 俺の欲求不満……)
 考えたくないこと、だった。
 だとすれば、今後どうなってしまうのだ?
 今日はなんとか直前で目覚めたが……想いを遂げてしまうことがあったら?


 二度と、彼女と目が合わせなくなるような気がして、輝晃は絶望的な気持ちになった。


*** ***


 結局、やり遂げてしまったのはいつのことだったか覚えていない。
 実際の行為を知った後だったのかもしれないし、前だったかもしれない。それくらい、あやふやな記憶だ。
 妄想の中で痛がる彼女を犯したことよりも、実際に教室で押し倒した時のことの方が鮮明で……当たり前だが、妄想なんか目ではないほどの感覚だった。
 実際の、彼女の身体の方が万倍も興奮したし、心地よかった。
「 アホ! 」
 輝晃が、ベッドの中でそんなことを告白したら小槙が真っ赤になって抗議した。
 もちろん、裸で気持ちのいい汗をかいたあとのことだ。
「なっ、なんの話やねん! それ……ッ」
「せやから、小槙をどれくらい好きかつー話や。この が」
「……そんなこと言われたかて」
 困惑して、小槙は輝晃を仰いだ。

「だから、早く見せてほしいんやけど?」

 さて、結婚をしぶる小槙への指輪作戦を決行した輝晃の攻勢は強い。押しに弱い彼女はタジタジだったが……頑固なところもある。
「あかん。大体、そんなこと言うて輝くん……わたしと目、合わせへんかったことってある?」
「あるで」
 アッサリ、と肯定されて、小槙は逆にその事実に驚いた。
 そんなことをされた記憶は、とんとない。
 彼はいつだって笑ってくれたハズだ。
「ホラな。気づいてへんと思ったけどやっぱりやったな、小槙。……俺が下凪先輩と付き合ってた頃や」
「………」
 ムゥ、と小槙は頬をふくらませた。
 彼女からすれば、それは気づくとか気づかないとかの問題ではない。小槙自身、彼を極力見ないようにしていた時期だった。

「彼女持ちやねんから、当たり前やん」

 小槙の不機嫌を敏感に察知して、輝晃はくすくすと笑った。
「なに? まだ拗ねとるん? 先輩とのこと」
「知らん知らん! とにかく、まだ輝くんと結婚はでけへんねんっアホっ」
 プーイッ、と顔を背ける彼女の首にかかったプラチナのリングに目を細めて、掬〔すく〕う。
「ま。ええよ? しばらくは、我慢したるさかい」

 にっこりと笑うと、彼は怖いほど優しく指輪に所有の印〔キス〕をつけた。


 >>>おわり。


 

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